広大な中国では、恐竜の活動跡が存在することは想像易く、様々な発見が相次ぎ、まさに世界一の『恐竜大国』と言えるでしょう。近年では、雲南省禄豊市恐竜山鎮梨園村で、地元住民2名が羊を連れて山に登った折に、前期白亜紀の恐竜の足跡化石を多数発見しました。恐竜の足跡がある岩石層の地層年齢は1億2000万年前を超えているとのことですが、足跡の形ははっきりしていて、保存状態がとても良いものでした。その後も研究者たちにより400以上にもなる足跡の化石が発見されました。

 雲南省禄豊市は、古くから恐竜の化石が見つかっている場所です。「中国龍(チャイナドラゴン)」とも呼ばれ、中国で出土された恐竜の代表格であるシノサウルスもここで発見されました。 シノサウルスはジュラ紀前期に生息した獣脚類で、体長は推定5.6mで、発見のきっかけは中国恐竜学の大家である楊鍾健氏により、1938年に日中戦争から逃れておこなっていた発掘プロジェクトで、4本の歯を持つ上顎が見つかったことです。その後、日中戦争や国共内戦の影響で研究が遅れ、1948年にその存在に関する論文が発表されました。

 中国で見つかった恐竜には、名前に「Sino」(中華、中国)を冠していることが多いです。例えば遼寧省で発見されたシノサウロプテリクス(中華龍鳥)・シノルニトサウルス(中華鳥龍)・シノカリオプテリクス(中華麗羽龍)、内モンゴル自治区で発見されたシノルニトイデス(中国鳥脚龍)・シノルニトミムス(中国似鳥龍)、新疆ウイグル自治区で発見されたシンラプトル(中華盜龍)、山東省で発見されたシノケラトプス(中国角龍)等です。これらの化石は1990年末から発見されたもので、愛国主義イデオロギーの強さもにじみ出ています。

 また、遼寧省北票市陸家屯にある義県層で発見されたディロング・パラドクスス(奇異帝龍)は、シノサウロプテリクスと並ぶ「メジャー選手」になりつつあります。体長は1.6メートルほどの小さな獣脚類です。そして同じ遼寧省では2012年に体長9メートルのユウティラヌス・フアリ(華麗羽暴龍)が報告され、ティラノサウルスの仲間の多くが羽毛に覆われていた可能性も浮上しました。これらの恐竜の名称を見てみると、自国内で発見された恐竜に「○○サウルス」「○○ニクス」といったラテン語由来の名前ではなく、中国語のアルファベット表記であるピンインのスペルをそのまま学名にしています。

 同じように、ピンインからの学名で、ズオロン・サレーイ(薩利氏左龍)という恐竜がいます。復元図では鳥に近い外見で描かれることが多いです。ズオロンの化石は2001年、新疆ウイグル自治区の石樹溝層で発見されました。体長は推定3.1メートルの若い個体でした。ズオロンが論文として報告されたのは2010年、「ズオロン」の由来は、清朝末期の重臣・左宗棠(Zuo Zongtang)にちなみますが、この命名は中国としては珍しいとされます。

 恐竜の学名が学者や発掘関係者、前近代の偉人以外の特定の人名にちなんで命名されることは少なく、特に、近現代史上の人物は、その評価に中国共産党のその時期の価値判断が強く反映されるため、不用意に名前を使うとリスクが大きくなります。ただ、左宗棠の場合は、滅亡寸前だった清朝の立て直しを図った国家の大黒柱として評判がいい人物であると同時に、19世紀に新疆の反乱を平定した功績もあります。もしかしたらズオロンの命名には、北京の政権による新疆支配の歴史を肯定する意味合いもあるかもしれません。恐竜の名前のひとつにも、それぞれのお国柄や背景を醸しています。

  JBpress「恐竜にも及ぶ共産党の政治的特殊事情」等を参照・整理

 

 今年はパリオリンピックが開催され、平和の祭典として盛り上がりました。中国のメダル獲得数は91個で第2位、金メダルは1位のアメリカと並び40個にのぼりました。中国では、この世界大会のような目立つ場だけでなく、一般の人々が楽しむ、スポーツのすそ野が急速に広がっています。

 中国のスポーツ産業の勃興は、2014年の国務院による文書「スポーツ産業の発展加速とスポーツ関連消費の促進に関する若干の意見」の発表が重要な節目になっているようです。この発表により、一般スポーツにも目が向けられるようになり、中国国家統計局と国家体育総局が発表したデータによると、14年から22年の間に中国スポーツ産業の市場規模は1兆3574億7100万元から3兆3008億元に、付加価値額は4040億9800万元から1兆3092億元に拡大しています。対GDP比はわずか0.6%から1.1%にまで上昇しました。

 また、スポーツの広がりとともに、ここ10年のスポーツ用品製造業の多様化・ハイテク化の成長もめざましく、スポーツイベントが際立った経済効果をあげるようになりました。そして、「eスポーツプレーヤー」「アスレティックトレーナー」などの新しい職業が誕生し、新たな雇用を生むブルーオーシャンとなっています。

2022年北京冬季オリンピックを契機として、ウィンタースポーツが流行し、スキーやスケート用品が販売され、スキー場やスケート場に人が集まりだしました。2023~2024年のウィンタースポーツ参加者数が延べ2億6400万人にのぼっています。またサマースポーツのサーフィンとパドルボード関連の消費者数は100万人を超え、消費規模は全体で10億元を上回っています。その他、キャンプ、釣り、馬術などの種目でもアウトドアスポーツの発展をリードしています。

 消費者層別では、「80後」「90後」と呼ばれる1980年から2000年に誕生した30~40歳代がアウトドアスポーツ消費の主力となり、2023年のアウトドアスポーツ参加者全体に占める割合がそれぞれ37.1%、35.2%となっています。消費頻度をみると、2023年のアウトドアスポーツ関連消費の1人当たり注文回数は新型コロナ感染症拡大前の2019年と比べて15.0%増え、2024年上半期(1~6月)には前年同期比59.8%増加しました。

アウトドアスポーツ愛好家の年平均消費額は比較的高い水準を維持し、1種目で2000~5000元(4~10万円程度)です。種目別に見ると、2024年上半期にはサイクリングや釣り、パラグライダー、サーフィン、ヨットの注文量が前年同期比で増加したほか、アウトドアスポーツの消費は一線都市である北京、上海、広州、深圳の4大都市と成都、重慶、杭州など15の新一線都市に集中しています。

ひと昔前はあまり好まれなかったマラソンも、健康志向の高まりの中、愛好者が増えています。去年は参加者800人以上規模のマラソン大会が699回開催され、参加者数は累計605万人を超えました。大規模な都市型マラソン大会は応募者数が20万人をこえ、大都市で開かれた大規模マラソン大会の総収入の平均値は2910万元になり、人気イベントとなっています。

お金をかけて体を動かし余暇を楽しむ、という時間の過ごし方は、プレッシャーの大きい中国の僅かな息抜き、なのかもしれません。

36krJapan 「中国、サーフィンなどのアウトドアスポーツが人気」等を参照・整理

現代生活において、スマホは常に片手に持つ、まさに携帯品となっています。そんな中、中国製スマホが勢いを増しています。アメリカの調査会社IDCの2024年4-6月スマホ中国国内市場シェアの調査によると、1位はvivo(ビボ)、2位がHuawei(Huawei(ファーウェイ))、3位OPPO(オッポ)、4位HONOR(オナー)、5位小米(シャオミ)、そして6位に米アップルとなりました。アップルは中国のスマホランキングでトップ5から脱落し、それに対して中国メーカーがトップ5を独占しています。今回トップに立ったビボの出荷台数は前年同期から17.1%増加しました。 Vivo(ビボ)は低?中価格帯の新製品が好調で、前四半期の5位から順位を大きく上げました。一方、米アップルは6位に転落、これは5年ぶりとのことです。

上位メーカーの中で最も伸び率が大きかったのはHuawei(ファーウェイ)で、同社の出荷台数は前年同期比50.2%増となっています。Huawei(ファーウェイ)はかつて、スマホ出荷台数で世界1位になったこともありましたが、2019年当時の米政権が同社を安全保障上の脅威として禁輸措置をとり、重要部品の供給制約を受けスマホの生産が減少、また低価格スマホ事業のオナーを売却し、Huawei(ファーウェイ)の中国におけるスマホシェアは2020年半ばには7%にまで低下しました。しかし、同社は半導体などの部品の中国国内開発を進め、2023年8月には、5Gへの接続機能や新しい半導体を市場投入、中国市場への復活を遂げています。

ここ数年のスマホ世界出荷台数シェア上位を見ていると、アップルとサムスン電子に続くのは中国メーカーの小米(シャオミ)とOPPO(オッポ)、更にビボや「Realme」(リアルミー)、「Transsion」(トランシオン)といった中国企業が続きます。いずれもアジアやアフリカなどの新興国を主体に事業展開して急成長を遂げています。また、日本市場においても、日本製スマホはほとんど目にしなくなり、かつては少なかった中国メーカーのスマホが、iPhoneと並んでしだいに目立つようになってきています。

中国スマホが新興国でシェアを拡大しているのには理由があります。所得が少ない新興国でスマホの販売を拡大しながら利益を得るには、スマホ自体の価格は抑えて数を多く販売する、薄利多売のビジネスが鍵を握ります。中国メーカーは自国に巨大な市場を抱えているのに加え、iPhoneをはじめとしたスマホを製造する工場が多く存在しています。スマホを大量生産・販売しやすく、新興国で力を持ちやすい環境が整っていたと言えます。

それに加え、世界規模で見た場合、中国以外のスマホメーカーがほぼ消滅している現実があります。かつてスマホ市場シェアトップ3に名を連ねていた韓国LGエレクトロニクスは長年スマホ事業で赤字が続き2021に撤退しました。モトローラ・モビリティは2度の売却の末にレノボ・グループ傘下となり、ソニーやAndroidでは老舗だった台湾企業HTCもスマホ事業を大幅に縮小させています。

その結果、中国メーカー以外世界市場で生き残ったのは、独自路線を進むアップルと、世界最大手であり規模の面で中国メーカーに唯一対抗できたサムスン電子くらいとなってしまいました。すでに中国メーカーが世界市場を席巻しているのが実状ですが、日本国民としては日本メーカーにも期待したいところです。

価格.comマガジン「コスパと技術力で圧倒する中国製スマホの強みと限界」等を参照・整理

                  

 中国では、ここ数年、「低空経済」という言葉がよく聞かれます。低空経済とは、高度1000m以下の低高度(実際のニーズによっては3000mまで)の空域において、民間の有人航空機と無人機を輸送手段として、人や物の輸送、空での作業のような低空域飛行活動によって、関連分野の融合発展をもたらす総合的経済業態を指します。簡単に言うとドローンや空飛ぶ車などのことで、急速に開発が進められ、大きく成長しています。

 中国では、既にドローンが輸送や農作業に広く使われ始めています。例えば、広東省深セン市の深セン人材公園では、ドローンがデリバリーボックスの上まで飛んで来て、高精度測位システムにより、運んできた商品を正確にボックス上部に置き、利用者が自分で商品を取り出すサービスが行われています。また、西部地域では松茸の収穫にドローンを利用し、今までは人がかごを背負って1、2時間かけて山を下りていたところを、現在では数台のドローンが上空を飛び、わずか15~30分で麓まで松茸を届けています。

 地域的には、深セン・広州が最も発達した都市と言われ、低空経済関連企業はいずれも4000社を超えています。特に深センは「ドローンの都」と呼ばれるほど「低空経済」が発達しています。DJI(大疆創新科技有限公司)、豊翼科技、Autel Robotics、科衛泰など産業チェーンの先頭に立つ企業が集まっています。深センの消費者向けドローンは、世界の約70%、産業用ドローンは世界の約50%の市場シェアを占めています。

 杭州も「低空経済」に力を入れている地域の一つです。杭州は、人工知能(AI)、ビッグデータ関連産業が発展しており、「低空経済」発展の技術面・人材面の基盤が備わっています。2020年10月には、民用無人操縦航空試験区に選ばれ、無人機の都市での応用シーンの商業化を模索しています。また「低空経済」の発展にはイノベーションが欠かせませんが、杭州はイノベーション振興政策を打ち出し、「低空経済」発展の政策的基盤をさらに強化しています。

 現在注目されているのは、eVTOL(電動垂直離着陸機)です。中国民用航空局は、このほど、世界のeVTOL業界で初めてとなる製造許可証(PC)を発行しました。今回PCを取得したのは億航智能が開発した、人を乗せて運航する自動運転航空機で、すでに中国国内のECプラットフォームで販売されているようです。最高設計速度は時速130キロ、最大航続距離は30キロ、最長飛行時間は25分、標準価格は239万元(およそ5000万円)だそうです。

 「中国低空経済発展研究報告(2024)」によると、2023年の中国の低空経済の規模は5059億5000万元に達し、eVTOL産業の規模は約10億元、民生用ドローン産業の規模も1200億元に迫っています。26年には、中国の低空経済の規模は1兆元を超え、1兆644億6000万元に達する見込みとなっています。新たな発展を求め、低空域への進出が増々激しくなるようです。

Science Portal China 「中国の「低空経済」、2年後は1兆元規模に」等を参照・整理

今年の夏は40度を超えるような異常な暑さが続きました。数年前までは30度を超えると暑かったのに、近年は暑い日が続いて体調を崩されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ナマコ(海参)は、夏目漱石が『吾輩は猫である』の中で「はじめてナマコ(海参)を食べた人の勇気や精神力には敬服するべきだ」と書いているように、グロテスクな姿が印象的で、日本では冬の味覚として食べられることが多いです。一方で、中国では乾燥ナマコ(海参)がフカヒレや乾燥アワビ、ツバメの巣などに並ぶ高級食材または漢方薬として珍重されています。ナマコ(海参)は中国語で「海参」と書きますが、「人参(朝鮮人参)」は山から採れる高級食材・漢方薬であり、「ナマコ(海参)」は海から獲れる高級食材・漢方薬であることに由来する、と言われます。

乾燥ナマコ(海参)は栄養価が高く高たんぱく質、しかも低カロリーで、コラーゲンやコンドロイチンを多く含み、皮膚細胞に水分を保たせて弾力とハリをもたせる作用があり、共に美容と健康に良いとされる成分です。また、心臓と腎臓・肝臓機能に働きかけ、造血作用による疲労回復や、免疫力アップ、性機能低下、強壮、疲労回復、冷え、老化防止などに効果があります。元気を付けたい、貧血気味、皮膚が乾燥気味の時に積極的に摂ると症状の改善が期待できます。

ナマコ(海参)は、実は夏が苦手で、水温が18度以上になると、冬眠ならぬ夏眠状態となり暑さをやり過ごします。水温が下がると活動しはじめ、主に砂や泥の海藻や微生物を食べ、その砂を排泄し海を綺麗にしています。歩く速度は1分間に約8㎝、ゆっくりゆっくりと動きます。人が乾燥ナマコ(海参)を食すにも時間がかかり、火を入れたり冷ましたりを繰り返しながら一週間程かけてゆっくりゆっくり戻していきます。

中国でも各海沿いの地域でナマコ(海参)がとられていますが、養殖がメインとなっており、三大産地である大連の遼寧ナマコ(海参)、青島や煙台の山東ナマコ(海参)、福建省の南方ナマコ(海参)が有名です。2023年のナマコ(海参)の総産出量は29.2万トンにもなり、価格的には低水準、供給がだぶつき気味になっています。7月には大連で「打開への路」と冠した2024第2回ナマコ(海参)大会が開かれ、ナマコ(海参)の宣伝活動や加工技術の向上、販売チャネルの開拓等について話し合われました。

中国では、日本の乾燥ナマコ(海参)は「海の黒いダイヤ」と呼ばれるほど、中国では大人気でした。潜水漁によってとったナマコ(海参)を数十日かけ丁寧に乾燥させる等、伝統の中で培った方法で丁寧に生産された乾燥ナマコ(海参)は、香港から中国へ向けて非常な高値で取引されていました。東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出により、中国では日本の水産品の輸入を全面停止した影響で、2023年の冬にはナマコ(海参)漁を見送った地域が相次ぎました。高級乾燥ナマコ(海参)を取り巻く水産品の産業チェーンに打撃を与えています。

これから涼しくなり、ナマコ(海参)が夏眠から目覚める時期を迎えます。今年の冬のナマコ(海参)漁が精一杯できるかどうか、自然環境、行政対応、国際問題などなど、絡み合う糸は複雑そうです。

能登ナマコ(海参)「ナマコ(海参)を巡る食文化・効能」等を参照・整理

 

パンダ、中国語では「熊猫(ションマオ)」と言えば中国を代表する動物ですが、その名は実は英語を基にしています。ご存じのように英語はPanda、そして、顔が猫のよう、体は熊のようなので、またの名をCat Bearと呼びました。その猫と熊を組み合わせ「猫熊(マオション)と言われるようになりました。では、なぜ前後がひっくり返ったのか、1944年重慶の中国西部科学博物館に展示された時、横書きで「猫」「熊」と書かれた説明を見て、参観者は右から左に「熊猫」と読んだために、「熊猫」が一般的になりました。台湾では「猫熊」を使うことが多いようです。

パンダは1800年代後半から1900年前半にかけ毛皮の珍しさが重宝され、主に欧米の狩猟家により乱獲されます。その後、その姿の愛らしさから生きたまま海外に運ぶことが試みられますが、大半は目的地に着く前に命を落としていきました。急速に頭数が減り、絶滅の危機に晒されます。中国政府が本格的にその対策に乗り出したのが1992年、パンダの保護とその生息地建設の10か年計画を開始します。四川省に作られたパンダのための人工林は有名です。その甲斐があって、1980年代には1100頭ほどだった野生パンダの数も2024年には1900頭ほどにまで増え、また飼育されているパンダも全世界で728頭(2024年1月)と発表されています。

パンダが初めて海を渡ったのは1936年、アメリカ人が生け捕りにしたパンダを国に連れて帰ったことでした。大人気となったことに目をつけた当時中国の国民党政府が、アメリカに2頭のパンダをプレゼントします。それが「パンダ外交」の始まりです。1970年代になると活発化し、日本にも1972年国交正常化と共に上野動物園に康康・カンカンと蘭蘭・ランランがやってきました。1984年にはワシントン条約によりパンダの海外取引は原則禁止、学術研究目的でのみ輸出入が可能となりました。

それでも、「プレゼント」ではなく、「レンタル」される形で「てパンダ外交」は依然として続けられています。輸入国はパンダの保護や研究資金のため、1ペア当たり年間100万ドル程度の中国への支払いが必要となりましたが、パンダの愛らしさは格別、所有権がなくても、レンタル料を払ってでも、動物園にいてほしい、ということです。まさに「友好の使者」であり、「最高の外交官」の役目を果たしています。

日本では、上野動物園で大人気だったシャンシャンが出産適齢期を迎え中国へ、また和歌山アドベンチャーワールドの永明が16頭もの子供をもうけた後に中国帰国したこと等記憶に新しいですが、パンダの人気は衰えることがありません。2024年6月31日現在で、上野動物園4頭とアドベンチャーワールド4頭、合計8頭いますが、2011年を最後に中国からのパンダは来ていません。一方で、中国政府は欧米の国々にパンダをレンタルし、関係改善、険悪ムードの緩和に役立てているようです。

可愛い仕草や表情の中に、人間たちの思惑を潜ませながらパンダ外交は続くのでしょうか。

九州大学附属図書館「パンダと人間:パンダの歴史」等を参照・整理

 6月の中国は大学入試「高考(ガオカオ)」の季節です。今年は6月7日から8日にかけて、行われました。また、今年は端午節の祝日と重なり、「いい事がある1日でありますように」と、受験生は吉祥を祈りました。共通テストと二次試験があり、私立大学も利用し、比較的チャンスの多い日本の大学入試とは異なり、中国は一発勝負の1回の高考(ガオカオ)の結果で大学が決まってしまうほど、延いてはその後の人生まで左右すると言われる重要な日です。今年は去年より51万人多く、過去最高の1,342万人が高考(ガオカオ)に挑みました。

 受験生にとっては通う高校も重要になります。日本でも親が有名大学(重点大学)合格者の多い高校に子どもを通わせたがる傾向がありますが、中国でも先ず各省や各市にある重点高校に入学します。そのために受験生のいる親は重点高校のある学区に引っ越すことも厭いません。かつては進学率も低く、経済的にも余裕のない中、一部のトップエリートが目指す場所だったはずですが、今では有名大学(重点大学)への競争が特に激化しています。高考(ガオカオ)は基本的に国語、数学、外国語が必須科目で、文科総合または理科総合いずれかを選択するので、高校生は理科系か文科系かを決めて勉強することになります。クラブ活動や修学旅行等課外活動はほとんどせず、ひたすら死に物狂いで勉強します。

 高考(ガオカオ)の結果(今年は6月24日)が受験生に通知されると、受験生は予め公表されている各大学の合格最低点と、自分の成績を突き合わせ、希望校をリストアップしていきます。各大学は学科別にそれぞれ合格最低点が設定されていて、それを見ながら希望順位をつけて選んでいきます。この大学選びもなかなか難しく、「点数3割、志望7割」とも言われるそうです。特に有名大学(重点大学)では、基本的に第1志望に書いていない受験生を取りません。志望校をうまく選ばないと、点数では入れるはずだった大学に入れないこともあります。第3志望までで受からなかった受験生は高考(ガオカオ)に失敗した、と言っても過言ではなく、実際「もっといい大学に受かるはずだったのに」というケースも少なくないそうです。

 また、受験生がどこの高考(ガオカオ)に参加するかによっても、行ける大学に影響してきます。決まった数字ではないのですが、各省ごとに定員枠が存在しています。各大学は、その大学の所在地の地域から最も多くの受験生を受入れる傾向があり、例えば、北京大学と清華大学の2023年度受験者数と受入数の割合を見ると、北京市受験生の合格率は1.02%、上海市受験生0.44%に対し、広西省や雲南省からの受験生の合格率は0.026%と低くなっています。高考(ガオカオ)は統一試験、と言いながら、各省で作成した問題も出題されますので、ある意味地域の実情に合わせた試験問題となっています。よって、大学が所在地の受験生を多く受け入れる理由があるわけです。逆に少数民族優遇政策により、少数民族の受験生は点数がプラスされる制度もあり、これもまた一部の受験生にとって有利となります。

 中国の大学進学率は既に50%を超えていますが、半数以上の高校生が、公平なのか、理不尽なのか、よくわからないこの競争を経験するわけです。受験生に幸が訪れることを願うばかりです。

               中国の科学技術「中国の大学入試~高考」等を参照・整理

 コロナ禍で冷え込んだ中国の各業界も次第に回復していますが、デパート業界はそうでもないようです。三越伊勢丹ホールディングスの発表によると、「天津伊勢丹」と「天津海浜新区伊勢丹」の2店舗を2024年2月末に閉店したのに引き続き、6月末で今度は上海市にある「上海梅龍鎮伊勢丹」も閉店することになりました。「店舗ビルの賃貸契約期間と合弁契約が満了になることから」との理由ですが、2023年1~9月期の営業損益は3億7600万円の赤字、と経営状況は決して芳しくなかったようです。

上海のデパートを振り返ってみますと、元々国営だったデパートは1980年代前半から「経営請負責任制」を採用しています。これは、企業が政府と請負契約を結び、一定期間に規定の利潤を納め、それを超える利益の分配は請負責任者に任せる、というもので、経営・価格・賃金・雇用が自由化され、品揃えの拡大、新商品の導入が促進されました。ショッピング環境の整備も進められ、1987年には「上海市第十百貨商店」がエスカレーターとエアコンを導入、1990年代初頭には輸入化粧品販売を拡張のため、ブランドごとの売場「箱売場」を設置、多様性を求める消費者のニーズを満たす場所となっていきました。

1992年には外資企業・日本の「ヤオハン」が現地の「第一百貨商店」と合弁で「上海第一八佰伴有限公司」を設立、1995年「新世紀商厦」の営業を開始します。その他に香港系の「東方商厦」や台湾系の「太平洋百貨」等、外資系が次々と上海へ進出、デパートは海外ブランドをはじめとする高額商品を扱う場所となります。2000年代に入ると、地元の国有デパートの統合や外資流入が進み、戦略的にウィンドウ陳列や販促活動を行うマーチャンダイジングの手法も普及します。デパートは日常とは少し異なる高級で特別な空間として存在してきました。

上海梅龍鎮伊勢丹は1997年に開業以来、日本をはじめとして海外の高級ブランドを扱ってきました。閉店を聞いた上海市民も驚いているようですが、上海市のある女性は、以前伊勢丹の近くで勤務していた時、伊勢丹でランチをした後店内を歩いて新しい化粧品やファッションを見るのが楽しみだった。閉店を聞き7、8年ぶりに来てみると、若年層は知らないブランドばかり、レストランは各階の端の不便な場所にあり、ほとんど人がいない、地下1階の食品売場が唯一多少賑やかだが、「前世紀に戻ったかのようね」と話しています。伊勢丹ばかりではなく太平洋百貨も上海店舗が次々と閉店、上海第六百貨も改築のため営業停止しています。

伝統的なデパートの不振と対称的に、ネット販売の普及と共に、大型ショッピングモールが急速に発展しています。3万㎡以上の大型ショッピングモールは、2023年末、店舗数381店にのぼり、2024年にはリニューアルを含め52店が新規開店予定となっています。これらは買い物だけではなく、グルメ、スポーツ、文化、教育等、多種多様なサービスを提供しています。また、コンサートや舞台劇を開催したり、子供を連れた家庭が買い物を楽しめるように遊び場と売り場を一体化させたり、「2次元」をテーマとした売り場を設けたり、各店舗それぞれの新たな工夫により消費者のニーズに応えようとしています。

過去のデパートは常に新しい商品や概念を取り入れ、消費者を楽しませてきました。そしてそれはいつの間にか「伝統的」になり、今度は大型ショッピングモールが新しくて特色のあるサービスで今の消費者を楽しませています。

アジア経済研究「中国におけるデパート業態の変容」等を参照・整理

一時期、日本でも大ブームを起こし、既に下火になってしまった『タピオカミルクティー』、甘いミルクティーともちもちとしてツルツル食感の黒タピオカのコンビネーションが楽しく、「よく飲んだなあ」という方もいらっしゃるでしょう。

日本語で『タピオカミルクティー』と呼ばれる飲み物の発祥地は台湾です。もともと、お茶をカクテルシェーカーで泡立てて飲む「泡沫茶(泡のお茶)」があり、ミルクティー「泡沫奶茶」もその一種でした。そこに「粉圓(タピオカ)※キャッサバの根茎から製造した澱粉」を加えるようになったのが1985年ごろで、「珍珠奶茶」の名前で出回るようになりました。暑い気候の台湾では、スイカジュースをはじめとして甘い飲み物を好む傾向があり、1990年後半には「珍珠奶茶」を看板に掲げたドリンクスタンドがまさに雨後の筍のように出現しました。メニューもタロイモや麦香等フレーバーのミルクティー、スイカやパパイヤジュース、緑豆フラッペや小豆フラッペ等が一般的で、日本ではあまり馴染みのないものもありました。

日本では、2013年に「珍珠奶茶」の元祖とも言われる『春水堂』が代官山に店を開いたことを皮切りに、LCCが台頭したことによる台湾ブームとインスタグラムの「SNS映え」を背景にして、タピオカブームが巻き起こりました。しかし、2020年を過ぎるとあっという間に姿を消してしまいました。

この原因については、中国グルメプラットフォーム「餐飲O2O」で「①SNSアップに飽きられ宣伝効果を失った、②商品がミルクティーのみの単一であった、③味が一般の日本人好みに改良されなかった、④値段が高めだった、⑤飲み残しやカップ・ストローのごみ問題が発生した」と分析しています。

一方、中国では台湾系列のミルクティーはまたたく間に広がり、全国的に普及しました。2023年のミルクティー市場規模は1,500億元を超えると見られ、また今後も拡大し続けると予測されています。その中でもダントツの店舗数を誇るのがドリンク&アイスクリームスタンド『MIXUE(ミーシュー、蜜雪冰城)』です。鄭州の大学生が起業したこの店は、現在36,000店舗、うち中国国内店舗は32000店にのぼっています。MIXUEの特徴は圧倒的な低価格で、他店に比べ半額以下の価格帯で販売していることです。

中国では大きな市場に発展したこの業界ですが、新規店が相次ぎ、新商品の開発も活発で競争が激化しています。更に、店舗スタッフや賃貸にかかるコストが年々上昇し、赤字企業も発生しています。このような厳しい状況の中で、各社が取った戦略の一つが「海外進出」で、シンガポールやマレーシア、タイ等海外展開を図っています。『MIXUE』も2018年にベトナム・ハノイに初出店以来、韓国やタイ等アジアを中心に11か国・4,000店舗を展開し、2023年には、既にブームが去った日本ですが、千葉・池袋・表参道等で新店舗をオープンしました。海外でも低価格路線を貫き、『タピオカミルクティー』は他店が500円を超える中、300円台で販売しています。また、キャラクター「スノーキング」を前面に押し出し、ブランド戦略にも力を入れているようです。

『タピオカミルクティー』店は、元手も要らず誰でも手軽に始められる事業、ということで過去一気に増えた感がありますが、日本ではブームが去り、まだまだ定着した感があるとは言えない状況です。日本にブーム再来はあるのか、中国からの参入の動向が気になるところです。

JBpress「“激安”ミルクティー店の中国最大手MIXUEが日本進出」等を参照・整理

現在の若者達が輝かしい未来を謳歌している、というわけでもなさそうです。ちょうど1年ほど前からSNSで『四不青年』という言葉が目立ち始めました。「恋愛、結婚、家、子女」の4項目を否定するという意味で、恋愛や結婚に消極的で、子供を作らず、家も買わない、という一部の若年層の特徴を現した言葉です。

最近、就職難のためお金がなく、未来の社会に希望が持てない現象を表していますが、更に否定の数が増え、『十不青年』という言葉が顔を出すようになりました。

『十不青年』の否定する10項目は「献血、寄付、結婚、子女、家、宝くじ、株式、基金、高齢者扶養、感動」とされ、基本的にお金がないので、寄付ができないし、宝くじも買えず、株式や基金への投資や出資もできない、更に高齢者介護や献血するような余裕もなく、更に結婚もできないので、子女もできず、家も必要なく、淡々と生きているだけなので感動することもないとうことのようです。

近年、中国では、日進月歩の社会発展の道を突き進んでいます。日々、エスカレーターを駆け上っていくような勢いで、求められる努力とプレッシャーはかなり大きいものでしょう。そんな中、「巻・・潤」の漢字が流行しています。若者達は入学試験や就職活動で常に競争に巻き込まれ(巻)、疲れて閉じこもり何もしないで寝そべる()、または自分の置かれた環境から逃げ(潤)ようとします。当然タフで日々努力し、競争をものともしない若者がいる一方で、そこから溢れ出てしまう若者も多く存在します。

また、頑張って勉強して高学歴で卒業して、高収入の職に就いたとしても、996(朝9時から夜9時まで、週6日労働)で働くことが必要で、身体を壊し仕事を続けられなくなります。或いはコロナの流行や学習塾の制限等の新政策の影響で職を失う若者も出てきています。

そんな環境下、若者達の新たな就職先が「親元」です。近年、親の世話をすることで、親から給与をもらう子供、「専業子女(全職児女)」が出現しています。実家の親と同居して食事を用意したり買い物に行ったり、一緒に散歩したり旅行に連れていく等々をすることで親の収入の一部を給与として支払ってもらう、というものです。前提には、親が年金をはじめとするある程度の収入があり、子女を「雇える」状況にあることになります。

「専業子女(全職児女)」については、「新たな親のすねかじり」、「仕事のストレスから逃げているだけ」という批判がある一方で、「一種の仕事であり新たな生活スタイルだ」という肯定的な意見や、「次の仕事や資格試験に備えるための過渡期」と捉える意見もあります。しかし、その背景にあるのは、コロナの影響や国際環境による中国経済の不透明さや、現在都市部の若者の5分の1が失業しているという若年層の就職難、特に高学歴者が増加し、彼らの労働市場での相対価値が下がり、供給が需要を超えているという事態であり、決して明るいものではないです。

老子の思想に「足るを知る者は富む」とは言いますが、若い人が諦観を達観として生きざるを得ないというのは悲しい事ではないでしょうか。中国政府も若者の雇用安定のための政策を打ち出していますが、効果のある処方箋が待たれます。

NEWSポストセブン「結婚や子供、家等を諦める若者達」等を参照・整理

中国と言えば「人口世界一」というイメージですが、2023年の世界一人口所多い国はインドの14億2500万人で1位となり、中国は2位の14億900万人、前年から208万人減少し、また出生数は902万人となり、中国の少子・高齢化傾向の加速化が顕著です。

中国の人口減少、少子・高齢化現象は加速傾向にあり、中国国家衛生健康委員会直属のシンクタンク・中国人口発展研究センターの試算によると、中国の総人口は2026~2030年の期間は年平均230万人ずつ、2031~2040年には370万人ずつ、2041~2050年には620万人ずつ、2050年以降になると年平均1000万人の減少を予測しています。2023年の一人の女性が一生のうちに産む子供の推計人数を示す「合計特殊出生率」は2022年時点で1.09と、統計以来最低数を記録しています。また、65歳以上の高齢者人口は2億1676万人で総人口位の15.4%を占め、前年の14.9%から増加しています。

1970年代、中国では急激な人口増加を抑制するために、「晩、稀、少」(遅く、間隔を空け、少なく産む)という「計画出産政策」をとりはじめました。1978年には「できるだけ1夫婦あたりの子どもは1人とし、多くても2人とする」との方針が国策として示され、1979年には「計画生産」の方針の「多くても2人とする」という文言も除かれ、上海市等を皮切りに「1人っ子政策」が開始されました。

その後、中国の生産年齢人口(15~59歳)は2011年をピークに減少に転じ、徐々に少子化の進展に伴う労働力不足や国内の投資・消費の縮小等が問題視されるようになり、そのため2016年には「1人っ子政策」は撤廃され、全ての夫婦に「第2子の出産」が認められるようになりました。2021年には夫婦1組に3人まで子供をもうけることを認めるようになりました。

2024年の出生率に関しては、3年近く続いたコロナ禍の影響による出生数減少の揺り戻しや、今年の干支は縁起が良いとされる辰年であることもあり、子どもを産みたがる夫婦が増加することが見込まれています。しかし、それは一時的であり、都市部での生活費や教育費の高騰や、キャリア重視の女性が増えていることで、子どもを産むことを許す政策は少子化対策にはなっていないのが実情とされています。

このように国の中央政策の転換を受け、各地で子育て環境を整える対策を打ち出し、産休や育休・出産介護休暇の新設や拡充が進んでいます。産休日数は、多くの地域で延長され、 北京市、天津市、上海市等16市では、国が定める「女性労働者の産休98日」に加えて、さらに60日上乗せされ、計158日となっています。浙江省、河北省、内モンゴル自治区は第3子以上の出産で産休を90日に延長し、計188日と定めています。

また、「第3子政策」を促進するため、地域による財政支援の拡充が重要視され、各地の条例改正によって、出産予定の夫婦に対して出産手当金や育児補助金制度を導入・強化するとともに、育児補助金制度について、第2子、第3子以上の子供を持つ家庭を優遇する地域が相次いでいます。居住環境についても地域によっては子育て家庭の住宅ニーズに対応した優遇措置を実施しています。

ちなみに日本の2023年の出生数は▲5.8%減、出生率は日本の1.26に低下し、総人口に占める65歳以上の割合は29.1%で、高齢者人口の割合は世界一です。中国、特に地方の政策が少子化に歯止めをかけることができるのか、日本のように高齢化に進んでいくのか、人口規模が大きいだけに世界に与える影響も大きそうです。

東洋経済ONLINE「中国の人口『少子高齢化の加速』で2年連続減少」等を参照・整理

近年、中国では化粧品の売上が伸びています。

特に中国国内ブランドの売上が伸びていて、2022年に市場規模は4,858.1億元(約9.7兆円)に達し、2023年には5,100億元(約10.2兆円)を超えると予測されています。購入者層を見ると、女性客は79.7%、25歳から35歳の層が61.2%と、若い女性世代が比重を占めています。

売上トップ企業をみると、2022年の1位は上海家化聯合有限公司、2位は珀莱雅化粧品有限公司、3位は華熙生物科技有限公司。1位の上海家化は長年売上トップを誇っている企業ですが、売上高を見ると、2020年は70.32億元、2021年は76.46億元、2022年は71.06億元と前年を下回っています。2位の珀莱雅は、前年の5位より順位を上げ、売上高も2021年の47.33億元から2022年の63.85億元へと大幅増収しました。3位の華熙生物は前年の4位より順位を一つ上げ、売上も2021年49.48億元から2022年63.59億元と増加しています。

2位の珀莱雅「PROYA」は浙江省に本社をおく上場企業であり、2003年杭州市に設立以来、若い年代を対象にバイオテクノロジーを駆使して機能性スキンケア商品を開発してきました。  また、多額の投資をしてオンラインチャンネルを整備し、販売比率を2017年の36%から2022年の90.98%にまで拡大しています。3位の華熙生物は山東省に本社のある上場企業で、スキンケア製品を扱っています。

珀莱雅と同じく浙江省にある化粧品会社、浙江宜格企業管理有限公司も近年急速に成長しています。2017年に杭州市で誕生した化粧品ブランド「花西子(フローラシス)」を展開し、中国国内だけでなく日本にも進出し、注目を浴びています。中国に古くからある花を用いた美容法により、フラワーエッセンスやハーブエキスなど植物の力を、最新の科学技術と融合させることにより製品開発をしています。また、パッケージ等見た目にもこだわり、扇形をしたケースや、中国故事をテーマとした彫刻リップなど中国伝統文化を取り入れた個性的なデザインにしています。

化粧品で売上を伸ばしている中国企業の特徴は、スキンケアを重点に技術開発していることです。中国の若い世代の女性は保湿や白い肌といった機能性を重視し、「効果がない=スキンケアではない」というトレンドの中、美肌の機能を強調した化粧品が売れています。同時に化学物質や合成成分を含まない、オーガニックや100%植物由来のようなナチュラル&クリーンラベル化粧品への需要が高まっています。それと共に、パッケージデザインにもこだわりがあり、中国伝統をテーマとしたデザインを好むとした割合がほぼ40%で、海外ブランドとは一線を画した中国国内仕様が好まれるようになってきています。

中国国外の化粧品メーカーにとっても、中国の市場規模と成長性は無視できないものです。欧米市場ではフレグランスやメイクの需要が高い一方で、特にスキンケア需要が高い中国市場では、同じアジア圏の肌質である日本メーカーの得意分野が受け入れられやすいと言われます。 

化粧品に対する中国消費者ニーズが拡大する中、競争は激化し、日本メーカー中国国内メーカー共に技術を磨いて次世代型商品を出していく必要がありそうです。

知粧株式会社「中国化粧品会社の状況と市場動向の変化」等を参照・整理

 

2024年が始まります。

干支は辰(龍)年になり、十二支の中では唯一の空想上の生き物です。また、2024年は60年に一度の甲辰(きのえたつ)の年で、陰陽五行説によると「甲」は草木の生長を表し、植物が成長するように勢いを増して増えていくという意味があり、吉祥を表す辰(龍)とともに縁起がよく、昨年まで努力してきたことが実を結ぶ年、とも言われます。

古代中国では、十干は日を順に10日ごとのまとまりで数えるための呼び名でした。10日ごとに、「一旬(いちじゅん)」と呼び、3つの旬(上旬、中旬、下旬)で1ヶ月になるとして使われていました。その後、万物は「陰」と「陽」の2つに分けられ、「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素でできているという陰陽五行説を十干に当てはめるようになります。

日本では、この「陰」と「陽」を「兄(え)」と「弟(と)」に見たて、「兄弟(えと)」と呼ぶようになったといわれています。十二支は、60通りの組み合わせにより、古くから暦のように使われてきました。代表的なものが「還暦」で、60年で干支が一巡し、誕生年の干支に還ることが還暦の由来です。

中国では、春節(2024年は2月10日)を節目に十二支が巡っていきます。干支には、中国人の伝統文化や民俗に対する特別な感情が込められており、「干支経済」を生み出しています。春節近くなると十二支をモチーフにした年越し用品、装飾品、日用品が大量に販売されます。特に近年「中国ブランドカルチャー」の風潮があり、中国市場の消費拡大を反映しています。中国のこの春節民俗は隋・唐の時代に日本に伝えられました。

十二支は、元々12年で一周する木星の軌道の位置を表す単位で年を数えるものです。12種類の動物は中国で時を表す動物たちに由来しています。中国では、漢の時代から一日の24時間を12等分し、その12分の1の2時間を「時辰(龍)」と呼んでいました。

辰(龍)は、中国では9つの動物でできていて、角は鹿、体は蛇、腹は蛤、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛に似ていて、長髭を生やしていると言われます。中国の伝統文化では権勢、高貴、栄誉の象徴であり、幸運と成功のシンボルとされています。辰(龍)は中空を飛行して雨や雲を起こし、蛇の形をした稲妻を放つとされます。

また、古代においては、方位を青辰(龍)(東)、白虎(西)、朱雀(南)、玄武(北)と呼んでいました。その後、辰(龍)は次第に神格化され、皇帝のみが使えるものとなりました。皇帝は「真辰(龍)天子」と称され、辰(龍)の図柄がある長衣「辰(龍袍」をはおり、辰(龍)の装飾がされた「辰(龍)冠」をかぶり、「辰(龍)椅」に座りました。

60年前の1964年、日本は東京オリンピックが開催され、東京モノレールや東海道新幹線が開通しました。次の1976年はロッキード事件がありました。中国は1964年核実験を行い、次の1976年は唐山地震が起き、周恩来、毛沢東が相次いで亡くなり、苦難の年でした。

先行き不透明な昨今、2024年はどのような年になるのか、辰(龍)にあやかり、平和な良い年であってほしいと思います。

CRI online「中国の「十二支」の由来」等を参照・整理

今年も秋から冬に季節が変わる中、新米を楽しむ方も多いと思います。日本ではお米生産は自国で行われていますが、海外からの輸入が増えています。中国でも新米が市場に出回るようになり、14億の巨大人口を支えるべく、お米の生産効率を高める政策を積極的に打ち出し、様々な技術を導入するため、モデル田で試験的な生産に取り組んでいます。

例えば、湖南省邵陽市には「再生水稲」のモデル田があります。「再生水稲」とは一度収穫した水稲の茎を利用して再び収穫する方法で、1回の田植えで2回の収穫を目指すものです。この水田では1ムー(6.67アール)当たりの平均収穫高が562キロに達しました。また、四川省涼山イ族自治州徳昌県で行われたスーパーハイブリッドライスのモデル田では1ムー当たりの平均生産量が1251キロと測定され、ハイブリッドライスの四半期ごとの1ムー当たりの生産量の世界新記録が更新されました。

ハイブリッドライスの誕生は、アメリカ人ヘンリー・ビーチェルが1963年にインドネシアで初めて成功したところに遡ります。ヘンリー・ビーチェルは1996年に世界食糧賞を獲得しました。日本では1969年に琉球大学の新城長有がハイブリッドライスの種子生産に必要な細胞質雄性不稔を実用化、その後、1981年からは農水省のプロジェクト研究でハイブリッドライスの研究開発を進める等ありましたが、どちらかというと増収より減反に重きを置きました。

1972年、日本と中国の国交回復の機運が高まる中、当時の日中国交回復促進議員連盟と農林省は、深刻な食糧不足に悩まされていた中国に、新城長有のハイブリッドお米を中国の視察団に贈呈し、中国は食糧増産として、ハイブリッドライスに着目します。当時あまり注目されなかった新城長有の技術を引き継いだのが、中国のハイブリッドライスの父と呼ばれる袁隆平でした。袁隆平は1971年から湖南省農業科学院のハイブリッドライス研究に従事、その後1984年には全国的な専門研究機関として、湖南ハイブリッドライス研究センター(のちに国家ハイブリッドライス工程技術研究センター)が設立、袁隆平はセンター主任に就きます。1997年にはスーパーハイブリッドライスの技術計画を示し、2000年から2011年までの三期に分け、それぞれ1ムー当たり生産量700キロ、800キロ、900キロの目標を次々とクリアし、2014年第四期には1000キロの目標を達成しました。

袁隆平のハイブリッドライスは人口が増え続けた中国の食糧を下支えしただけではなく、グローバルな食糧問題解決にも役立ってきました。1990年代の初め、国連食糧農業機関(FAO)は、ハイブリッドライスの普及を発展途上国の食糧不足問題を解決する戦略的措置の一つに組み入れ、袁隆平を首席顧問に任じました。袁隆平を長とする中国のハイブリッドライスの専門家たちは何回も、ベトナム、ミャンマー、インド、フィリピン、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、ブラジル、ブルネイなどの国々へ赴き、ハイブリッドライスの指導と援助を行いました。

より効率的に、より良いものを生産するために技術を駆使してテストを重ね、その成果を広げ収益につなげていく、どうしても電子機器や自動車生産のような工業分野に求めがちです。しかし、食糧問題が楽観視できない今、ハイブリット農業への積極的な取り組みが求められています。袁隆平の生涯にわたるハイブリッドライスへの態度から学ぶべきことも多そうです。

農業協同組合新聞「恐るべし中国のコメ戦略」等を参照・整理

 

 コンビニは中国で「便利店」と呼ばれて、コンビニはいつの間にか日常生活に欠かせないものになっています。都市部では道を歩くとコンビニチェーン店が多数あり、無人店舗も見られます。お弁当等のちょっとした食料品やチケットの購入、トイレの利用等、都市生活はもちろん、車中心の生活の地域でも、どこにでもある存在になっています。

 

中国のチェーンストア業界団体「中国連鎖経営協会(CCFA)」が、コンビニ各社の店舗数ランキング「2022年中国コンビニTOP100」を発表しています。それによると、広東省発の「美宜佳(メイイージャー)」が3万8店舗で、前年の2位から1位となりました。運営会社の美宜佳有限公司は1997年の設立後、広東省の東莞市を中心に拡大発展を遂げ、ここ2年間で年間5,000店舗近くを新規出店しています。ほぼ広東エリアでしか見かけなかったのですが、華南、華中、華東等複数の地域、260都市、中国全土に出店し、地方ブランドに過ぎなかったのが全国ブランドになりつつあります。

 

逆に前年1位から2位になった国有石油大手、中国石油化工集団(シノペック)傘下の「易捷(イージエeasy joy)」は2万8006店舗、3位は国有石油大手の中国石油天然気集団(CNPC)傘下の「崑崙好客(クンルンハオカー uSmile)」で2万600店舗です。ともにガソリンスタンドを経営する会社で、中国全土で自社経営のガソリンスタンドに併設、運営・管理モデルを統一して展開しています。中国の国内高速道路網は発展中、自動車人口も更に増加するとみられ、ガソリンスタンドコンビニの利用人口も増えると考えられます。

 

中国にいるたいていの日本人にとって日本なじみのコンビニチェーンはありがたいお店ですが、ランクはどうかというと、5位「羅森(ローソン)」5,641店舗となっています。ローソンは1996年上海百聯グループと合資会社「上海ローソン有限公司」を設立、1997年に1号店を出店しました。出店スピードは比較的ゆっくりでしたが、2012年に「羅森中国投資有限公司」を設立し、上海ローソンを傘下におさめ、積極的に新規出店を図りました。その成果か日系企業としては店舗数1位となっています。

 

日本で店舗数の多いセブン-イレブン・ジャパンが運営する「7-Eleven便利店」は1,732店舗で第8位でした。北京・天津(2004年進出)、成都(2011年)ではセブン-イレブン・ジャパンの直接投資により店舗を展開、上海、広東はフランチャイズ運営をしています。上海地区はセブン-イレブンの台湾地区運営権を持つ「統一超商」が、広東(香港マカオを含む)は香港怡和集団(Jardine Matheson)傘下のDairy Farm International Holdings Ltd.,が運営しています。

 

10位に中国大陸全家の運営する「全家FamilyMart」が2,666店舗となりました。ファミリーマートは前年の8位から順位を2つ落としています。2004年に上海に進出、その後広州、蘇州と杭州に店舗を展開しました。2011年、「康師傅」等を傘下に持つ台湾頂新グループが、「ファミリーマート中国」の株式を取得し、日本ファミリーマートと台湾ファミリーマートに代わって、実質的に「ファミリーマート中国」が運営しています。

 

中国国内系の店舗が主に3・4級都市やロードサイトで展開しているのに対し、外資系のコンビニの多くが1・2級都市に集中し、商品や運営・管理方法も異なっているようです。中国に行った際にはコンビニ内をチェックするのも面白いかもしれません。

 

Note「「2022年中国コンビニトップ100」日経トップはローソン」等を参照・整理

 

杭州アジア競技大会の開会式に習近平国家主席が出席しましたが、その前の9月20日、義烏市の後宅街道李祖村、日用雑貨市場「義烏国際商貿城」に足を運び、当地の商店主と交流し、「地域の実情に応じた特色産業の発展、農業の振興、貿易の推進、質の高い発展を促すべきである」といった発言をし、義烏の更なる発展を期待しました。

 

義烏市場は、中国と関係のある人なら知らない人はいないほど、国際的な日用雑貨品取引市場として知られている地域です。今年1月~7月、義烏の輸出入総額は3,211億元になり、そのうち輸出額は2837億元、輸入額は373億元、輸出をメインとしています。「世界の日用商品の首都」として世界230以上の国・地域と貿易を行っています。義烏は新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越え、2023年第1四半期の1日当たりの来場者数は20万人で、うち外国人は2000人に達し、コロナ禍前の水準を取り戻しています。

 

義烏市場が活発な理由としてビジネス環境の良さが挙げられます。例えば、実店舗からオンラインへの転換は商品を扱う業者共通の選択ですが、2020年末にスタートしたオンラインプラットフォーム「Chinagoods」は、調達、出荷、税金申告、代金回収等の「ワンストップ」サービスのほかに、業者に国際倉庫、物流、決済、ブッキング等の貿易サービスも提供しています。このサービスは大変好評で、翌年2021年の商品取引額は168億元に達しました。また、業者の提案に基づき、さまざまな機能を付加実装し、「Chinagoods」のプラットフォーム上で取引データが同期されていれば、納品された後すぐに為替決済が可能になり、オフラインで別途手続きを踏む必要はなく、更に「Chinagoods」に商品をアップロードすると、6か国語のオンライン翻訳を利用することができます。

 

当地での会社設立登録の手続きも、市政府が開設したオンラインサービスを利用すれば、20分ほどで完了し、営業許可証は無料で送られてきます。また、義烏市政府は、起業後についても、企業側の問題点を速やかに把握するために、定期的に企業を訪問するだけでなく、各企業に専属担当者を1人配置し、企業側が相談をすれば、電話でアドバイスをしてもらえます。義烏市は外国の業者が多いため、独自の工夫として渉外紛争人民調停委員会(外調委)を設立、語学力に優れ、貿易に精通し、信用のある外国人をトラブルの調停に参加させて、これまでに1000件以上の調停に成功、トラブル解決の成功率は96%としています。

 

また、習近平国家主席が視察した義烏市李祖村は現在「国際文化創客(起業家村)」の建設に力を入れています。外観を改善し、特徴を掘り起こし、農業・文化・農村等に関連する観光プロジェクトを開発し、探求学習プロジェクトを中心に、ライブコマースを通して、新規事業案件を積極的に導入しています。観光客を誘致しながら、起業家の入居も積極的に行うことで村民の収入増や農村活性化につなげています。

 

中国が国策として「一帯一路」戦略を提唱して10年、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「義新欧(義烏-新疆-欧州)」中欧班列の営業範囲は、域外の国・地域は50カ国以上、160以上の都市に及び、アフリカや中東アジアとの取引も増加、外部との交流が益々広がっています。

 

義烏のビジネス環境において、今後も活況に成長していけるかは、義烏という町全体の、衣食住や交通のトレンドの変化をとらえ、精力的にイノベーションを起こし、世界に売り込んでいく姿勢が鍵になります。

 

新華社通信「中国浙江省義烏市が「国際文化メイカー村」に」等を参照・整理

自動車のナンバープレートは、日本でもいろいろなタイプがあります。お客を載せる営業車・タクシーは緑色であり、レンタカーは「わ」ナンバーと、最近ではオリンピックバージョンや、花や恐竜等が描かれているものもあり、気をつけて見ているとなかなか面白いものがあります。

 

中国のナンバープレートも色に意味があります。青色は一般的に中国人の所有する普通サイズの自動車やコンパクトカー、黄色は中国人の所有するトラックやバス等の大型自動車両や教習自動車、黒色は領事館や外資系企業等外国人が所有する自動車、白色は軍隊や警察・裁判所が所有する自動車になります。最近では、新エネルギー自動車につけられる緑色のプレートがよく見られるようになりました。

 

一般自動車のナンバープレートは、例えば「浙A・1B123」、「苏E・CD456」のように漢字+アルファベット+英数字5文字で綴られます。最初の2文字は登録地を表しています。例えば、「浙」は浙江省、「A」は杭州市を、「苏」は江蘇省「E」は蘇州市を指します。続く5桁はもともと数字のみで管理していましたが、中国国内の自動車両が増えるのにともない、5桁の組み合わせでは間に合わなくなり、アルファベットを組み合わせることになりました。一方、緑色のナンバープレートは通常のナンバープレートに比べて1桁多く、3桁目に純電気自動車を指すDか、プラグインハイブリッド自動車を指すFが入ります。

 

新エネルギー自動車の購入には様々な優遇政策があり、購入時に数千元(10万円程度)から数万元(100万円程度)の補助金が受けられます。税金面でも自動車購入税や、自動車税が免除されます。また、一般自動車の場合、地域によっては各期のガソリン自動車台数が決められていて、ナンバープレートの発行数も決められています。自動車にナンバープレートを付けるために、抽選で勝ち取らなければなりませんが、緑色のナンバープレートはそうした制約・制限がないので、いつでも付けることができます。

 

この緑色のナンバープレートを付けた自動車に対して、地域や場所によって様々な優遇措置があります。例えば、橋や高架道路等交通量を調整するため、「この日は末尾が奇数のナンバーのみ通行可能」等のやり方で、通行制限される場合がありますが、緑色のナンバープレートにはその制限が免除されることがあります。その他に駐車場が2時間まで無料等、優遇制度を設けているところもあります。

 

緑色のナンバープレート自体もエコをうたい、無公害の印刷方法で、同時に偽造や盗難を防ぐべくQRコードを使用し、シェーディング印刷により偽造されにくくなっています。また、登録地を示す最初の2文字の後、「E」をモチーフにした印が入り、通常のプレートと比べ質もデザイン性もアップしているようです。

 

中国のナンバープレートは管理性が高く、違反記録等も自動車両ナンバーから検索できます。以前からスピード違反やシートベルト不着用等、ナンバープレートとともに写真に撮影され、自動的に違反が記録され、罰金が引き落とされる、という制度でした。緑色のナンバープレートも出てきたばかりのころに比べ、新たな管理体制が整い、一般自動車と同じようにネットで情報を検索できるようになっているようです。こうした分野においても中国の技術運用と管理体制の普及スピードは目を見張るものがあります。

※江蘇省のナンバーは「江」ではなく「苏」です。ご指摘を受け訂正いたしました。

捜狐網「道路上の緑のナンバープレート、どんな意味?」等を参照・整理

日本では梅雨明けが報じられ、いよいよ夏本番、仕事の後の一杯のビールがしみじみとおいしい季節になりました。近年、ビアガーデンや居酒屋以外に、「町中華で633を」といった声がテレビ等で聞かれるようになっています。手軽に中華料理的な小皿をつまみにアルコールを楽しみ、しめにはラーメンを食べて満足、まさに呑兵衛には心強い場所です。

「町中華」というのは明確な定義があるわけではないですが、昔から地域に根ざし愛され続ける、中華料理中心の大衆食堂や日本に来た中国人が始める中華料理店を指すのが一般的で、高級中華料理と区別されています。かつてフリーライターの北尾トロと下関マグロが2014年に「町中華探検隊」という隊を結成し、日本全国の町のラーメン屋さんを巡り、「夕陽に赤い町中華」(集英社インターナショナル、2019年6月5日)を出版しています。それらの活動が徐々に注目され始め、「町中華」という言葉がマスコミで取り上げられるようになりました。

一方、高級感のある中華料理は、店によって四川料理や広東料理のように特定の分野に特化していることが多く、広い店内にぐるぐると回る円卓があり、コース料理も用意されています。料理は本場の味というより日本風にアレンジされた料理に近いものが多く、値段も一皿何千円の単位で、フカヒレや燕の巣といった高級食材を扱い、気楽にちょっと立ち寄る、というよりは、ハレの場に利用する特別感があります。

新型コロナウイルス感染の拡大によって、多くの飲食店が休業や時短営業を余儀なくされ、売上が急減し、廃業に追い込まれる店舗も多く見られました。その一方で、コロナ禍でも客入りを保ち、生き残っている飲食店業種も多く存在し、その一つに「町中華」が挙げられます。「町中華」で提供されるメニューは店によって様々で、一般的な中華料理店で提供される麻婆豆腐やエビチリといった料理を始め、おつまみに最適な本場中国の味の小皿料理や、餃子やラーメン、チャーハン等主食類にわたるまで幅広いメニューが提供されています。

更に店によっては和食や洋食であるはずのカツ丼やカレーライスがメニューに並ぶ店もあり、専門店とは対局にあるバラエティーさがあります。また、値段も500円から1000円が中心で、毎日通っても飽きず、昼食にも夕食時にも気軽に通える町の食堂的存在です。また居酒屋としての役割も兼ね備え、お通し代もいらず、仕事終わりに気楽に一杯飲みたい人に重宝されています。

「町中華」は、何十年にも渡って親から子へ受け継がれてきた老舗店や、中国の青年が起業した個人経営の店舗が中心で、その地域に根づいている場合が多く、よって常連客も多いです。また、接客や調理方法にマニュアルがないため、店主やスタッフそれぞれの人柄が色濃く出ます。店の味は店主によって個性が出て、たとえ暖簾分けの店であっても味が異なり、接客時の形式ばらない受け答えや、個性的な店舗の雰囲気が人を惹きつける魅力となっているようです。

と同時に、老舗の家族経営ということで、店舗は自己所有の物件で家賃が発生せず、家族経営で、人件費が大幅に抑えられる場合も多いです。ただ、そんな筋肉質的な経営がゆえに、後継者がいない問題で閉店する話も耳にします。一人でも、家族でも、仲間同士でも気楽に入って、ほっと一息つける「町中華」は、日本の市民を癒してくれる、頼もしい存在として、定着化しています。

Canaeru「「町中華」から学ぶ、コロナ過でもつぶれない飲食店のヒント」を参照

 

中国の大学全国統一入学試験「高考(ガオカオ)」が6月7日から行われました。今年の全国の受験生は1291万人、去年より98万人増加し、過去最高の受験者数となりました。日本よりも学歴重視傾向の強い中国の高校生にとって、大学入試は一生を左右すると言っても過言ではなく、家族をはじめ社会全体をも巻き込んだ大イベントとなります。7日の試験の最初の科目は「言語(国語)」で、文章の理解力や作文能力が問われました。出題される作文テーマ(一部)から、その年の状況や求められる中国の世相を知ることができます。

テーマ:他人の明かりを吹き消しても自分が更に明るくなることはない。他人の道を塞いでも自分が更に遠くへ行くことはない。一輪だけ咲いても春は来ない、たくさんの花がそろって春が満ちる。

3月の国際会議で習近平主席が述べた言葉からの出題であり、欧米諸国に対して中国独自路線の外交政策を強調した発言でした。中国の国際的な立ち位置を、中国共産党の立場にそった回答が求められる課題のようです。

テーマ:良い物語は、より良い意思表示や意思疎通に役立ち、心を動かし知恵を啓発する。良い物語は、人の運命を変えたり、民族の姿を表現できたりもする。

中国古典の『隆平集』、『韓非子』からの出題があり、それを引き継いだ形で「物語の力」を主題とした課題です。中国古典より正確な「歴史観」、「民族観」、「国家観」を学び取り、愛国感情と民族の自信を高めるように導く意図があるようです。

テーマ:人類は、技術の発展により時間を制御できるようになったが、またそれによって時間の下僕にもなった。

「人と技術と時間」を主題とした課題であり、受験生の理論的、形象的、創造的な思考能力を高め、問題を発見し、焦点を定め論証を展開していく力を求めるテーマです。前述のテーマとは異なり、模範解答がすぐに思いつかず、受験生の好奇心・想像力・探求心を刺激するテーマで、青少年の科学的資質の向上を重要視され、このような問題でその能力を求めているようです。

テーマ:本試験の問題文にある「静かに邪魔されない」という思考は、現代の青少年には珍しくない。学習・生活していく中で自分の空間でリラックス・まったりしたり、成長したりしたいと考える。

「物語の力」と同じく、試験の本文で「静かに邪魔されない」ためにイヤホンを使い続け、突発性難聴を発症した件を記した問題であり、それを踏まえた「青少年の自己空間」を主題とした課題です。受験生が「自己空間」を出発点に自分の生活や成長に対する考え方、親や教師への思いなどを求めているようです。

「言語(国語)」は、「歴史」、「道徳」といった面から政治的イデオロギーを反映しやすい科目ですが、中国教育部の発表でも「国語」の試験について「党の二十大精神を貫き、習近平による新時代中国独自の社会主義思想の指導を堅持し、試験内容を深化させるべき」と言及しています。
6月下旬には、受験生の得点数が通知され、その点数によって志望大学に合格できるか決まります。受験生にとつては、「国語」の作文科目は必須であり、テーマは得点を左右する要素であるため、受験戦争を勝ち抜く中国ならではのテクニックが必要となっているのかもしれません。

海報新聞「2023年大学全国統一試験語学全国試験問題分析」を参照・整理

流行語は、世相(社会現象)を象徴すると言われ、2022年の流行語から中国の社会をうかがい知ることができます。流行語は中国の急速な発展を表す反面、その疲れを癒すようなところもあるようです。

1.励奮発・勇毅前行 (風のように早く、勇敢に粘り強く前へ進む)

党のリーダーシップのもと、国民が一致団結して明るい未来を建設していこう、というまさにスローガン的な言葉が流行語のトップにあげられました。

2.中国式現代化 (中国式の現代化)

中国は鉄道やクリーンエネルギーといった各分野で中国は急速に現代化を進めています。先進国の近現代化との差別化を強調した言葉とも言えます。

3.新賽道 (新レース)

経済面で競争力を高めるために新しい道に進まなければならない、新技術の開発や新工程の模索などを推し進めることで、国を挙げてのレースです。

4.大白 (医療従事者に対する愛称)

コロナウイルスが猛威を振るう中、白い防護服に身を包んだ医療従事者が働いている様子が日本でも報道されました。その姿をディズニーのベイマックス(大白)に例えたことから始まったようで、白い防護服を着た人の愛称となりました。

5.煙火気 (暮らしの匂い)

日常が非日常になったコロナ期を経て、煮炊きの煙のような普段の生活を象徴するような言葉が人の心を慰めるものとして流行しました。汪曾祺の小説「人間煙火最撫人心」のヒットから広まり、入試の作文の課題などにもなりました。

6.天花板(見えない天井)

元々天井板を表す言葉が「トップクラス」を表す言葉として使われるようになりました。端整な顔立ちを「顔値天花板」、コミュニケーション能力に長けていることを「社交天花板」等と使います。

7.拿捏(受け身)

元々掌握する・弱みにつけこむという意味ですが、指先で相手をつまむイメージの動作を指します。魅力ある異性に「掌で転がされてしまった」というように受け身で使われることが多いようです。

8.雪刺客 (アイスクリームの刺客)

冷凍庫からアイスクリームを選んでレジに持っていったら思わぬ高値、でも会計も済む所で仕方なく支払う…安価な物の中に高価な商品を忍ばせるような消費者を欺く行為を「刺客」に例えており、十大ネット用語にも選ばれたユーモアのある言葉です。

9.精神内耗(精神的エネルギーロス)

機械の内部消耗になぞらえ人間の精神・心も消耗しますが、この言葉が流行した背景には2022年7月「村に帰って3日、叔父のおかげで精神の内部消耗が治った」動画の流行で、不自由でも積極的に生きる姿が感動を呼びました。

10.沈浸式 (没入)

近年、博物館で、メタバースで疑似体験をする「沈浸式体験」が流行しました。普段でもほかの世界を遮断して何かに没頭するような状態を「沈浸式」と表します。最適な読書環境で読書をする、化粧に専念する、なども「沈浸式」と言われます。

 

Courage blog「知っていると中国通!?中国の2022年度10大流行語を紹介!」を参照・整理励奮発・勇毅前行 (風のように早く、勇敢に粘り強く前へ進む)