中国では、ここ数年、「低空経済」という言葉がよく聞かれます。低空経済とは、高度1000m以下の低高度(実際のニーズによっては3000mまで)の空域において、民間の有人航空機と無人機を輸送手段として、人や物の輸送、空での作業のような低空域飛行活動によって、関連分野の融合発展をもたらす総合的経済業態を指します。簡単に言うとドローンや空飛ぶ車などのことで、急速に開発が進められ、大きく成長しています。
中国では、既にドローンが輸送や農作業に広く使われ始めています。例えば、広東省深セン市の深セン人材公園では、ドローンがデリバリーボックスの上まで飛んで来て、高精度測位システムにより、運んできた商品を正確にボックス上部に置き、利用者が自分で商品を取り出すサービスが行われています。また、西部地域では松茸の収穫にドローンを利用し、今までは人がかごを背負って1、2時間かけて山を下りていたところを、現在では数台のドローンが上空を飛び、わずか15~30分で麓まで松茸を届けています。
地域的には、深セン・広州が最も発達した都市と言われ、低空経済関連企業はいずれも4000社を超えています。特に深センは「ドローンの都」と呼ばれるほど「低空経済」が発達しています。DJI(大疆創新科技有限公司)、豊翼科技、Autel Robotics、科衛泰など産業チェーンの先頭に立つ企業が集まっています。深センの消費者向けドローンは、世界の約70%、産業用ドローンは世界の約50%の市場シェアを占めています。
杭州も「低空経済」に力を入れている地域の一つです。杭州は、人工知能(AI)、ビッグデータ関連産業が発展しており、「低空経済」発展の技術面・人材面の基盤が備わっています。2020年10月には、民用無人操縦航空試験区に選ばれ、無人機の都市での応用シーンの商業化を模索しています。また「低空経済」の発展にはイノベーションが欠かせませんが、杭州はイノベーション振興政策を打ち出し、「低空経済」発展の政策的基盤をさらに強化しています。
現在注目されているのは、eVTOL(電動垂直離着陸機)です。中国民用航空局は、このほど、世界のeVTOL業界で初めてとなる製造許可証(PC)を発行しました。今回PCを取得したのは億航智能が開発した、人を乗せて運航する自動運転航空機で、すでに中国国内のECプラットフォームで販売されているようです。最高設計速度は時速130キロ、最大航続距離は30キロ、最長飛行時間は25分、標準価格は239万元(およそ5000万円)だそうです。
「中国低空経済発展研究報告(2024)」によると、2023年の中国の低空経済の規模は5059億5000万元に達し、eVTOL産業の規模は約10億元、民生用ドローン産業の規模も1200億元に迫っています。26年には、中国の低空経済の規模は1兆元を超え、1兆644億6000万元に達する見込みとなっています。新たな発展を求め、低空域への進出が増々激しくなるようです。
Science Portal China 「中国の「低空経済」、2年後は1兆元規模に」等を参照・整理