上海は7月上旬には梅雨が明け、夏本番を迎えています。湿度が高く蒸し暑いですが、深緑色の葉を広げたプラタナスの街路樹が、涼しげな木陰をつくっています。
 古き街並みが次々と高層ビルに生まれ変わる上海では、この数年で仕事の仕方も大きく変化しています。その1つが緑色のアイコンのアプリ「微信(WeChat)」の活用です。中国版LINEとも呼ばれるアプリの普及で名刺交換は形骸化し、微信IDの交換が実質的な挨拶となりました。初対面の別れ際には双方がメッセージを送信し、そのままチャットが始まることも珍しくありません。日本では面談後に落ち着いてから御礼のメールをしようとPCを開く頃、中国では既に複数の関係者を招き入れたグループチャットが立ち上がり、情報共有や意思決定が次のステージに進んでいることも日常で、このスピード感には驚かされるばかりです。
 
また、このアプリは電子マネーの機能もあり、スーパーや飲食屋台、公共交通機関での支払いや、知人・友人への送金も可能です。私は上海に到着した翌日からすでに1か月間ほど現金を触らない生活が続いています。(ただし、携帯電話のバッテリー残量には敏感になりました。)
 
横断歩道でクラクションを鳴らして「我こそは優先」と走っていた自動車は、歩行者の横断を待つようになり、交通マナーも格段に向上しました。車のナンバープレートは、従前の青色から電気自動車など新エネルギー車を示す緑色が増えています。現在、上海市では青色ナンバー取得に10万元(約200万円)もの大金が必要ですが、緑色ナンバー取得には、この費用が不要で、現地でEVシフトが進むのも頷けます。
 
6月下旬の端午節には、有名な観光地である外灘(バンド)の絵葉書を買いました。静岡県内で暮らす娘に宛てた手紙は、中国郵政の緑色のポストに投函され、この文章が掲載される頃には、家族の手元に届いているだろうと楽しみにしています。

中国では、「果酒」と呼ばれる伝統的な果実酒に「楊梅酒」があります。楊梅(ヤマモモ)の果実を原料として使用し、砂糖と米麹などの材料と一緒に発酵・蒸留されてできたのが「楊梅酒」です。梅雨の頃に、実をつけることから、名付けられたと言われる楊梅(ヤマモモ)は、暑さに強く、耐乾燥性に優れた植物であり、浙江省、福建省、広東省、広西チワン族自治区などで広く栽培されています。「楊梅酒」は、中国の伝統的な文化に根付いた酒の一つであり、中国国内外で愛される酒の一つとして広く知られています。

果実酒の代表格「楊梅酒」
楊梅〈日本名:ヤマモモ〉は、浙江省では寧波市下の余姚(よよう)市の特産として知られています。6月中旬~7月初旬が滴下の盛期を迎え、その瑞々しい果実は、そのまま食べても柔らかくて甘酸っぱく、とてもおいしいですが、24時間ほどしか日持ちがせず、鮮度がすぐに落ちてしまいます。そのため、地元ではこの楊梅(ヤマモモ)を「白酒」(蒸留酒)に1カ月ほど漬けて「楊梅酒」を作り、年中、楊梅(ヤママモ)を楽しめるようにしました。余姚市では、瓶詰めされ市販されています。地場の「楊梅酒」は、アルコール度数は40度以上もあるため、一気に飲むと酔いやすく、ゆっくり味わったほうがよいとされています。また「楊梅酒」は、漬け込んだ楊梅(ヤママモ)を1個食べるだけで、腹痛や暑さ負けに効果があるといわれていますが、相当量のアルコールを含んでいるので注意が必要です。

拡大する中国の果実酒市場
中国のアルコール市場では、低アルコールにした果実酒は20歳から30歳代の若い女性に人気があり、特に都市部に住む人達が主力消費者になっています。中国では荔枝(ライチ)酒、枸杞(クコ)酒、梅酒、桃酒など、様々な種類の果実酒が季節ごとに登場して、季節感のある果実酒を楽しむことができます。また、市場に出回る、こうした果実酒は、白酒やビールに比べてアルコール含有量が低くて飲みやすく、また果実酒は栄養価が高く、ポリフェノールが多く含まれ、健康にも優れているとも言われています。

 

余姚江、奉化江、甬江の合流地点である三江口の北岸に、「老外灘」と呼ばれる場所があります。それは、かつてイギリス領事館、浙江税関、カトリック教会、寧波郵便局、商業銀行などとして使われた建物が並び、中国の伝統的な住宅建築とは対照的な欧風の雰囲気が漂う地域です。また、美術館やレストラン、コーヒーショップ、パブなども立ち並び、観光客だけでなく地元の若い世代や寧波に暮らす外国人に人気のスポットになっています。

三江口は、すでに唐代から中国四大港湾の一つで、鑑真和上はここから日本へ向かいました。また、ここは寧波幇(寧波商人)発祥の地でもあります。1840~42年のアヘン戦争後、清国は南京条約を結び、寧波は五大通商港のひとつになりました。開港後まもなく甬江の北岸は、イギリス、フランスなどの居留地として発展していきました。それが「外灘」です。「外灘」というと、上海のBund(バンド)がよく知られていますが、寧波の「外灘」の方が上海より20年ほど古い歴史があります。

寧波の貿易を支えたのは、「寧波幇」と呼ばれている同郷の商人集団です。寧波が通商港としての重要性を帯びたことで、甬江沿岸一帯は寧波人の商業活動の舞台となりました。やがて、寧波商人は上海へ集中的に移住し、清末の上海経済界で重要な地位を占めるようになります。寧波商人は、銭荘業や海運業などに従事し、有力な商人集団として成長していきました。銭荘というのは、中国の旧式の金融機関です。寧波商人の銭荘は、現金を授受せずに帳簿上で出入額を記載する「過賬制度」を用いて、大口の商業取引を促進しました。寧波の銭業会館は、当時の銭荘の姿をほぼ完全な形で保存している博物館です。会館には、寧波金融業の発展を記した碑文や歴史的モニュメントが残されています。

寧波という都市は、北京や上海ほどの繁栄はなく、中国の地方都市のひとつにすぎないかもしれません。しかし、唐宋代から東アジア海域交流の拠点で、あちこちに歴史の重みを感じる建造物が点在しています。寧波料理を味わいながら寧波の街歩きをする旅に、富士山静岡空港からの直行便が再開したら、ぜひお出かけください。

 

 

寧波老外灘

【寧波老外灘】

(出典:「寧波晩報2021.7.15

【寧波の銭荘】

(出典:http://www.360doc.com/content/23/0131

 コンビニは中国で「便利店」と呼ばれて、コンビニはいつの間にか日常生活に欠かせないものになっています。都市部では道を歩くとコンビニチェーン店が多数あり、無人店舗も見られます。お弁当等のちょっとした食料品やチケットの購入、トイレの利用等、都市生活はもちろん、車中心の生活の地域でも、どこにでもある存在になっています。

 

中国のチェーンストア業界団体「中国連鎖経営協会(CCFA)」が、コンビニ各社の店舗数ランキング「2022年中国コンビニTOP100」を発表しています。それによると、広東省発の「美宜佳(メイイージャー)」が3万8店舗で、前年の2位から1位となりました。運営会社の美宜佳有限公司は1997年の設立後、広東省の東莞市を中心に拡大発展を遂げ、ここ2年間で年間5,000店舗近くを新規出店しています。ほぼ広東エリアでしか見かけなかったのですが、華南、華中、華東等複数の地域、260都市、中国全土に出店し、地方ブランドに過ぎなかったのが全国ブランドになりつつあります。

 

逆に前年1位から2位になった国有石油大手、中国石油化工集団(シノペック)傘下の「易捷(イージエeasy joy)」は2万8006店舗、3位は国有石油大手の中国石油天然気集団(CNPC)傘下の「崑崙好客(クンルンハオカー uSmile)」で2万600店舗です。ともにガソリンスタンドを経営する会社で、中国全土で自社経営のガソリンスタンドに併設、運営・管理モデルを統一して展開しています。中国の国内高速道路網は発展中、自動車人口も更に増加するとみられ、ガソリンスタンドコンビニの利用人口も増えると考えられます。

 

中国にいるたいていの日本人にとって日本なじみのコンビニチェーンはありがたいお店ですが、ランクはどうかというと、5位「羅森(ローソン)」5,641店舗となっています。ローソンは1996年上海百聯グループと合資会社「上海ローソン有限公司」を設立、1997年に1号店を出店しました。出店スピードは比較的ゆっくりでしたが、2012年に「羅森中国投資有限公司」を設立し、上海ローソンを傘下におさめ、積極的に新規出店を図りました。その成果か日系企業としては店舗数1位となっています。

 

日本で店舗数の多いセブン-イレブン・ジャパンが運営する「7-Eleven便利店」は1,732店舗で第8位でした。北京・天津(2004年進出)、成都(2011年)ではセブン-イレブン・ジャパンの直接投資により店舗を展開、上海、広東はフランチャイズ運営をしています。上海地区はセブン-イレブンの台湾地区運営権を持つ「統一超商」が、広東(香港マカオを含む)は香港怡和集団(Jardine Matheson)傘下のDairy Farm International Holdings Ltd.,が運営しています。

 

10位に中国大陸全家の運営する「全家FamilyMart」が2,666店舗となりました。ファミリーマートは前年の8位から順位を2つ落としています。2004年に上海に進出、その後広州、蘇州と杭州に店舗を展開しました。2011年、「康師傅」等を傘下に持つ台湾頂新グループが、「ファミリーマート中国」の株式を取得し、日本ファミリーマートと台湾ファミリーマートに代わって、実質的に「ファミリーマート中国」が運営しています。

 

中国国内系の店舗が主に3・4級都市やロードサイトで展開しているのに対し、外資系のコンビニの多くが1・2級都市に集中し、商品や運営・管理方法も異なっているようです。中国に行った際にはコンビニ内をチェックするのも面白いかもしれません。

 

Note「「2022年中国コンビニトップ100」日経トップはローソン」等を参照・整理

 

杭州アジア競技大会の開会式に習近平国家主席が出席しましたが、その前の9月20日、義烏市の後宅街道李祖村、日用雑貨市場「義烏国際商貿城」に足を運び、当地の商店主と交流し、「地域の実情に応じた特色産業の発展、農業の振興、貿易の推進、質の高い発展を促すべきである」といった発言をし、義烏の更なる発展を期待しました。

 

義烏市場は、中国と関係のある人なら知らない人はいないほど、国際的な日用雑貨品取引市場として知られている地域です。今年1月~7月、義烏の輸出入総額は3,211億元になり、そのうち輸出額は2837億元、輸入額は373億元、輸出をメインとしています。「世界の日用商品の首都」として世界230以上の国・地域と貿易を行っています。義烏は新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越え、2023年第1四半期の1日当たりの来場者数は20万人で、うち外国人は2000人に達し、コロナ禍前の水準を取り戻しています。

 

義烏市場が活発な理由としてビジネス環境の良さが挙げられます。例えば、実店舗からオンラインへの転換は商品を扱う業者共通の選択ですが、2020年末にスタートしたオンラインプラットフォーム「Chinagoods」は、調達、出荷、税金申告、代金回収等の「ワンストップ」サービスのほかに、業者に国際倉庫、物流、決済、ブッキング等の貿易サービスも提供しています。このサービスは大変好評で、翌年2021年の商品取引額は168億元に達しました。また、業者の提案に基づき、さまざまな機能を付加実装し、「Chinagoods」のプラットフォーム上で取引データが同期されていれば、納品された後すぐに為替決済が可能になり、オフラインで別途手続きを踏む必要はなく、更に「Chinagoods」に商品をアップロードすると、6か国語のオンライン翻訳を利用することができます。

 

当地での会社設立登録の手続きも、市政府が開設したオンラインサービスを利用すれば、20分ほどで完了し、営業許可証は無料で送られてきます。また、義烏市政府は、起業後についても、企業側の問題点を速やかに把握するために、定期的に企業を訪問するだけでなく、各企業に専属担当者を1人配置し、企業側が相談をすれば、電話でアドバイスをしてもらえます。義烏市は外国の業者が多いため、独自の工夫として渉外紛争人民調停委員会(外調委)を設立、語学力に優れ、貿易に精通し、信用のある外国人をトラブルの調停に参加させて、これまでに1000件以上の調停に成功、トラブル解決の成功率は96%としています。

 

また、習近平国家主席が視察した義烏市李祖村は現在「国際文化創客(起業家村)」の建設に力を入れています。外観を改善し、特徴を掘り起こし、農業・文化・農村等に関連する観光プロジェクトを開発し、探求学習プロジェクトを中心に、ライブコマースを通して、新規事業案件を積極的に導入しています。観光客を誘致しながら、起業家の入居も積極的に行うことで村民の収入増や農村活性化につなげています。

 

中国が国策として「一帯一路」戦略を提唱して10年、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「義新欧(義烏-新疆-欧州)」中欧班列の営業範囲は、域外の国・地域は50カ国以上、160以上の都市に及び、アフリカや中東アジアとの取引も増加、外部との交流が益々広がっています。

 

義烏のビジネス環境において、今後も活況に成長していけるかは、義烏という町全体の、衣食住や交通のトレンドの変化をとらえ、精力的にイノベーションを起こし、世界に売り込んでいく姿勢が鍵になります。

 

新華社通信「中国浙江省義烏市が「国際文化メイカー村」に」等を参照・整理

自動車のナンバープレートは、日本でもいろいろなタイプがあります。お客を載せる営業車・タクシーは緑色であり、レンタカーは「わ」ナンバーと、最近ではオリンピックバージョンや、花や恐竜等が描かれているものもあり、気をつけて見ているとなかなか面白いものがあります。

 

中国のナンバープレートも色に意味があります。青色は一般的に中国人の所有する普通サイズの自動車やコンパクトカー、黄色は中国人の所有するトラックやバス等の大型自動車両や教習自動車、黒色は領事館や外資系企業等外国人が所有する自動車、白色は軍隊や警察・裁判所が所有する自動車になります。最近では、新エネルギー自動車につけられる緑色のプレートがよく見られるようになりました。

 

一般自動車のナンバープレートは、例えば「浙A・1B123」、「江E・CD456」のように漢字+アルファベット+英数字5文字で綴られます。最初の2文字は登録地を表しています。例えば、「浙」は浙江省、「A」は杭州市を、「江」は江蘇省「E」は蘇州市を指します。続く5桁はもともと数字のみで管理していましたが、中国国内の自動車両が増えるのにともない、5桁の組み合わせでは間に合わなくなり、アルファベットを組み合わせることになりました。一方、緑色のナンバープレートは通常のナンバープレートに比べて1桁多く、3桁目に純電気自動車を指すDか、プラグインハイブリッド自動車を指すFが入ります。

 

新エネルギー自動車の購入には様々な優遇政策があり、購入時に数千元(10万円程度)から数万元(100万円程度)の補助金が受けられます。税金面でも自動車購入税や、自動車税が免除されます。また、一般自動車の場合、地域によっては各期のガソリン自動車台数が決められていて、ナンバープレートの発行数も決められています。自動車にナンバープレートを付けるために、抽選で勝ち取らなければなりませんが、緑色のナンバープレートはそうした制約・制限がないので、いつでも付けることができます。

 

この緑色のナンバープレートを付けた自動車に対して、地域や場所によって様々な優遇措置があります。例えば、橋や高架道路等交通量を調整するため、「この日は末尾が奇数のナンバーのみ通行可能」等のやり方で、通行制限される場合がありますが、緑色のナンバープレートにはその制限が免除されることがあります。その他に駐車場が2時間まで無料等、優遇制度を設けているところもあります。

 

緑色のナンバープレート自体もエコをうたい、無公害の印刷方法で、同時に偽造や盗難を防ぐべくQRコードを使用し、シェーディング印刷により偽造されにくくなっています。また、登録地を示す最初の2文字の後、「E」をモチーフにした印が入り、通常のプレートと比べ質もデザイン性もアップしているようです。

 

中国のナンバープレートは管理性が高く、違反記録等も自動車両ナンバーから検索できます。以前からスピード違反やシートベルト不着用等、ナンバープレートとともに写真に撮影され、自動的に違反が記録され、罰金が引き落とされる、という制度でした。緑色のナンバープレートも出てきたばかりのころに比べ、新たな管理体制が整い、一般自動車と同じようにネットで情報を検索できるようになっているようです。こうした分野においても中国の技術運用と管理体制の普及スピードは目を見張るものがあります。

 

捜狐網「道路上の緑のナンバープレート、どんな意味?」等を参照・整理

日本では梅雨明けが報じられ、いよいよ夏本番、仕事の後の一杯のビールがしみじみとおいしい季節になりました。近年、ビアガーデンや居酒屋以外に、「町中華で633を」といった声がテレビ等で聞かれるようになっています。手軽に中華料理的な小皿をつまみにアルコールを楽しみ、しめにはラーメンを食べて満足、まさに呑兵衛には心強い場所です。

「町中華」というのは明確な定義があるわけではないですが、昔から地域に根ざし愛され続ける、中華料理中心の大衆食堂や日本に来た中国人が始める中華料理店を指すのが一般的で、高級中華料理と区別されています。かつてフリーライターの北尾トロと下関マグロが2014年に「町中華探検隊」という隊を結成し、日本全国の町のラーメン屋さんを巡り、「夕陽に赤い町中華」(集英社インターナショナル、2019年6月5日)を出版しています。それらの活動が徐々に注目され始め、「町中華」という言葉がマスコミで取り上げられるようになりました。

一方、高級感のある中華料理は、店によって四川料理や広東料理のように特定の分野に特化していることが多く、広い店内にぐるぐると回る円卓があり、コース料理も用意されています。料理は本場の味というより日本風にアレンジされた料理に近いものが多く、値段も一皿何千円の単位で、フカヒレや燕の巣といった高級食材を扱い、気楽にちょっと立ち寄る、というよりは、ハレの場に利用する特別感があります。

新型コロナウイルス感染の拡大によって、多くの飲食店が休業や時短営業を余儀なくされ、売上が急減し、廃業に追い込まれる店舗も多く見られました。その一方で、コロナ禍でも客入りを保ち、生き残っている飲食店業種も多く存在し、その一つに「町中華」が挙げられます。「町中華」で提供されるメニューは店によって様々で、一般的な中華料理店で提供される麻婆豆腐やエビチリといった料理を始め、おつまみに最適な本場中国の味の小皿料理や、餃子やラーメン、チャーハン等主食類にわたるまで幅広いメニューが提供されています。

更に店によっては和食や洋食であるはずのカツ丼やカレーライスがメニューに並ぶ店もあり、専門店とは対局にあるバラエティーさがあります。また、値段も500円から1000円が中心で、毎日通っても飽きず、昼食にも夕食時にも気軽に通える町の食堂的存在です。また居酒屋としての役割も兼ね備え、お通し代もいらず、仕事終わりに気楽に一杯飲みたい人に重宝されています。

「町中華」は、何十年にも渡って親から子へ受け継がれてきた老舗店や、中国の青年が起業した個人経営の店舗が中心で、その地域に根づいている場合が多く、よって常連客も多いです。また、接客や調理方法にマニュアルがないため、店主やスタッフそれぞれの人柄が色濃く出ます。店の味は店主によって個性が出て、たとえ暖簾分けの店であっても味が異なり、接客時の形式ばらない受け答えや、個性的な店舗の雰囲気が人を惹きつける魅力となっているようです。

と同時に、老舗の家族経営ということで、店舗は自己所有の物件で家賃が発生せず、家族経営で、人件費が大幅に抑えられる場合も多いです。ただ、そんな筋肉質的な経営がゆえに、後継者がいない問題で閉店する話も耳にします。一人でも、家族でも、仲間同士でも気楽に入って、ほっと一息つける「町中華」は、日本の市民を癒してくれる、頼もしい存在として、定着化しています。

Canaeru「「町中華」から学ぶ、コロナ過でもつぶれない飲食店のヒント」を参照

 

中国の大学全国統一入学試験「高考(ガオカオ)」が6月7日から行われました。今年の全国の受験生は1291万人、去年より98万人増加し、過去最高の受験者数となりました。日本よりも学歴重視傾向の強い中国の高校生にとって、大学入試は一生を左右すると言っても過言ではなく、家族をはじめ社会全体をも巻き込んだ大イベントとなります。7日の試験の最初の科目は「言語(国語)」で、文章の理解力や作文能力が問われました。出題される作文テーマ(一部)から、その年の状況や求められる中国の世相を知ることができます。

テーマ:他人の明かりを吹き消しても自分が更に明るくなることはない。他人の道を塞いでも自分が更に遠くへ行くことはない。一輪だけ咲いても春は来ない、たくさんの花がそろって春が満ちる。

3月の国際会議で習近平主席が述べた言葉からの出題であり、欧米諸国に対して中国独自路線の外交政策を強調した発言でした。中国の国際的な立ち位置を、中国共産党の立場にそった回答が求められる課題のようです。

テーマ:良い物語は、より良い意思表示や意思疎通に役立ち、心を動かし知恵を啓発する。良い物語は、人の運命を変えたり、民族の姿を表現できたりもする。

中国古典の『隆平集』、『韓非子』からの出題があり、それを引き継いだ形で「物語の力」を主題とした課題です。中国古典より正確な「歴史観」、「民族観」、「国家観」を学び取り、愛国感情と民族の自信を高めるように導く意図があるようです。

テーマ:人類は、技術の発展により時間を制御できるようになったが、またそれによって時間の下僕にもなった。

「人と技術と時間」を主題とした課題であり、受験生の理論的、形象的、創造的な思考能力を高め、問題を発見し、焦点を定め論証を展開していく力を求めるテーマです。前述のテーマとは異なり、模範解答がすぐに思いつかず、受験生の好奇心・想像力・探求心を刺激するテーマで、青少年の科学的資質の向上を重要視され、このような問題でその能力を求めているようです。

テーマ:本試験の問題文にある「静かに邪魔されない」という思考は、現代の青少年には珍しくない。学習・生活していく中で自分の空間でリラックス・まったりしたり、成長したりしたいと考える。

「物語の力」と同じく、試験の本文で「静かに邪魔されない」ためにイヤホンを使い続け、突発性難聴を発症した件を記した問題であり、それを踏まえた「青少年の自己空間」を主題とした課題です。受験生が「自己空間」を出発点に自分の生活や成長に対する考え方、親や教師への思いなどを求めているようです。

「言語(国語)」は、「歴史」、「道徳」といった面から政治的イデオロギーを反映しやすい科目ですが、中国教育部の発表でも「国語」の試験について「党の二十大精神を貫き、習近平による新時代中国独自の社会主義思想の指導を堅持し、試験内容を深化させるべき」と言及しています。
6月下旬には、受験生の得点数が通知され、その点数によって志望大学に合格できるか決まります。受験生にとつては、「国語」の作文科目は必須であり、テーマは得点を左右する要素であるため、受験戦争を勝ち抜く中国ならではのテクニックが必要となっているのかもしれません。

海報新聞「2023年大学全国統一試験語学全国試験問題分析」を参照・整理

流行語は、世相(社会現象)を象徴すると言われ、2022年の流行語から中国の社会をうかがい知ることができます。流行語は中国の急速な発展を表す反面、その疲れを癒すようなところもあるようです。

1.励奮発・勇毅前行 (風のように早く、勇敢に粘り強く前へ進む)

党のリーダーシップのもと、国民が一致団結して明るい未来を建設していこう、というまさにスローガン的な言葉が流行語のトップにあげられました。

2.中国式現代化 (中国式の現代化)

中国は鉄道やクリーンエネルギーといった各分野で中国は急速に現代化を進めています。先進国の近現代化との差別化を強調した言葉とも言えます。

3.新賽道 (新レース)

経済面で競争力を高めるために新しい道に進まなければならない、新技術の開発や新工程の模索などを推し進めることで、国を挙げてのレースです。

4.大白 (医療従事者に対する愛称)

コロナウイルスが猛威を振るう中、白い防護服に身を包んだ医療従事者が働いている様子が日本でも報道されました。その姿をディズニーのベイマックス(大白)に例えたことから始まったようで、白い防護服を着た人の愛称となりました。

5.煙火気 (暮らしの匂い)

日常が非日常になったコロナ期を経て、煮炊きの煙のような普段の生活を象徴するような言葉が人の心を慰めるものとして流行しました。汪曾祺の小説「人間煙火最撫人心」のヒットから広まり、入試の作文の課題などにもなりました。

6.天花板(見えない天井)

元々天井板を表す言葉が「トップクラス」を表す言葉として使われるようになりました。端整な顔立ちを「顔値天花板」、コミュニケーション能力に長けていることを「社交天花板」等と使います。

7.拿捏(受け身)

元々掌握する・弱みにつけこむという意味ですが、指先で相手をつまむイメージの動作を指します。魅力ある異性に「掌で転がされてしまった」というように受け身で使われることが多いようです。

8.雪刺客 (アイスクリームの刺客)

冷凍庫からアイスクリームを選んでレジに持っていったら思わぬ高値、でも会計も済む所で仕方なく支払う…安価な物の中に高価な商品を忍ばせるような消費者を欺く行為を「刺客」に例えており、十大ネット用語にも選ばれたユーモアのある言葉です。

9.精神内耗(精神的エネルギーロス)

機械の内部消耗になぞらえ人間の精神・心も消耗しますが、この言葉が流行した背景には2022年7月「村に帰って3日、叔父のおかげで精神の内部消耗が治った」動画の流行で、不自由でも積極的に生きる姿が感動を呼びました。

10.沈浸式 (没入)

近年、博物館で、メタバースで疑似体験をする「沈浸式体験」が流行しました。普段でもほかの世界を遮断して何かに没頭するような状態を「沈浸式」と表します。最適な読書環境で読書をする、化粧に専念する、なども「沈浸式」と言われます。

 

Courage blog「知っていると中国通!?中国の2022年度10大流行語を紹介!」を参照・整理励奮発・勇毅前行 (風のように早く、勇敢に粘り強く前へ進む)

 

「聖闘士星矢」が中国の視聴者に日本のアニメを愛する扉を開いたとすれば、「スラムダンク」は多くのバスケファンにとって啓蒙の先生になりました。1990年代、「スラムダンク」が中国のテレビ画面でスポーツの成長を描いた最初の日本の漫画となり、多くのティーンエイジャーがこの漫画のおかげでバスケットボールに夢中になりました。

1980 年以前、中国では外国のアニメの放送はありませんでしたが、1981 年に最初の外国のアニメ、日本の「鉄腕アトム」が中国の扉を開きました。このアニメは、その豊かな想像力と鮮やかな色で中国に衝撃を与えました。映画とテレビ業界は、中国のティーンエイジャーを視野にしていましたが、当時は中国市場に参入できる漫画は少なく、外国のアニメは中国のローカルアニメに大きな影響を与えることはありませんでした。しかし、外国のアニメ、特に日本のアニメが中国への扉を開き、その新鮮でエキサイティングなスタイルで多くの中国の若い視聴者を魅了したのは、1980 年代半ばから後半にかけてのことでした。

中国の漫画の力不足、産業化の開始の遅れ、漫画の創造的な才能の不足、遅れた技術レベルにより、米国、日本の漫画が中国で広く普及しています。統計によると、1980 年代に中国で制作されたアニメの量は非常に少なく、当時のティーンエイジャーの視聴ニーズを満たすことができませんでした。1日あたり20分の新しいアニメに基づいて計算すると、中国の漫画の年間生産量は7,200分に達する必要があります。1990年代初頭のアニメは1980 年代から 1990 年代にかけて、中国でのローカルアニメの供給は需要に比べてはるかに少なく、当時、なぜ日本のアニメが中国のスクリーンに殺到したのかを理解することができます。 

「スラムダンク」は、1990年から1996年まで「週刊少年ジャンプ」に連載したマンガであり、アジア各国に紹介された後、1997年末に「スラムダンク」が中国上海で放送された後、大きな反響がありました。小中学生が自発的に結成したバスケチームが誕生しました。当時、上海で最大の地元のスポーツ用品店である上海スポーツ用品店は、ゴム製バスケボールが狂ったように売れ、高価なバックボードはほとんど在庫がありませんでした。登場人物は、主役も脇役もそれぞれ個性があり、何年たっても忘れられない作品です。おバカだけど、真面目なところがチャーミングなさくらきみち、無数の女の子を魅了する流川楓、小柄だけど元気な綾子が好きな宮城亮太、でも心強い兄貴・赤城武則などです。「スラムダンク」は人の持つ輝きを大きくし、「問題児」も天才も凡人も平等に扱うという人もいます。理想がある限り、人生は可能性に満ちているはずです。したがって、あなたがティーンエイジャーであろうと、家族とキャリアを持っている叔父であろうと、いつでも自分の可能性を見ることができます。「スラムダンク」は、当時の若者たちの無限の想像力と、自分自身と未来への情熱を満たす、理想主義に満ちた作品です。アニメのリソースが乏しかった当時の中国で、情熱と夢と情熱と面白さに満ちたこの作品は、求められずにはいられませんでした。 

27年の時を経て、「スラムダンク」が映画として再び上演されています。この映画は2022年末に日本で初公開されます。この映画は、今年 4 月に中国で正式に公開されました。最も重要なことは、この映画がまだ多くのファンの懐かしさを感じていることです。多くの人々のバスケットボールの啓蒙と青春の代名詞であるこの映画は、中国土で映画の形で上映されます。視聴者は主にフォローした人です。ドラマと大好きなバスケットボール。 グループ、観客は映画だけでなく思い出も見えます。

 

                              数英デジタル記事・27年の時を経て再び爆発「スラムダンク」を参照・整理

 

中国製スマホは、高機能で安価で手に入れられることから、今や世界で高いシェアを占めている。XiaomiOPPOHuawei等は日本でも販売されている。よく言われる「中国製品は粗悪なので買わない」といった見方は、スマホに限っては当てはまらない。

しかし、最近、その中国スマホの出荷台数は減少傾向にあり、スマホ市場は飽和状態に近づき、スマホに対する消費者の需要は弱まっているといった見方が出てきている。数字を見ても歴然であり、2022年、中国市場向けスマホの出荷台数は28,580万台、前年比で13.2%減少し、10年ぶりに3億台割れとなった。通常1012月期はスマホ販売のかきいれ時であるが、2022年はコロナ禍の影響で年末商戦は不発に終わり、出荷低迷に拍車がかかり、20221012月期の出荷台数は、前年同期比12.6%減の7,290万台だった。

米調査会社のIDCによると、2022年通年のスマホ世界出荷台数は、前年比11.3%減の12億台だった。これは13年以来最も少ない台数である。221012月の世界スマホ出荷台数は3億台で、前年同期から18.3%減少した。6四半期連続の落ち込みで、減少幅は四半期として過去最大であり、221012月の出荷台数は前の四半期(79月期)をも下回った。中国スマホ市場の低迷は、世界全体にも影響を及ぼしている。

このように、昨年、中国スマホ市場は販売台数に停滞が見られたが、2023年は行動制限もなくなり国内景気は上向きになると見られているが、中国のスマホ市場はコロナ禍以前の2020年から継続的に減少傾向にあり、コロナの感染拡大はそれを加速したに過ぎず、すぐには回復していない。なぜか、現在、スマホ市場は均質化され、他のスマート端末の急速な発展や、スマート家電、スマートスピーカー等のデバイスの普及により、スマホの重要性が低下し、以前ほどの市場需要が見込めなくなったとの見方もある。このほかに、販売数が減少した原因は、国内スマホ市場の競争が激化し、市場が飽和状態にあること、買い替えサイクルの長期化、新製品イノベーションの欠如、5Gの推進、製品の過剰な性能によるコストアップ、所得の低下に伴う消費意欲の欠如等があげられる。

スマホメーカーは、自社製品の注目度を高めるため、次々と新製品を出し、中国では1年に2回のモデルチェンジが当たり前となっている。スマートフォンの新機種が1カ月あたり10機種以上発表されているが、代り映えのしない製品は消費者から見向きもされない傾向にある。今、「折り畳みスマホ」、「カメラ機能」、「ゲーム」という3つの分野が注目されているが、消費者はどう見ているのか。

中国市場、世界市場を問わず、スマホの出荷台数は減少し続けた2022年。今年、転換点を迎えられるかどうかは、依然として直面している「市場の飽和」、「技術革新の遅れ」、「性能の過大評価」、「収益の減少」等をどう解決するか、スマホ市場の動静は気になるところである。

(国際商報等を参考に整理)