中国には多くの美容院があり、大規模チェーン店から個人経営のサロンまで多様なスタイルがあります。人気のある美容院は、技術力やスタイリストのコミュニケーション能力、そして顧客満足度が高いことで知られています。中国滞在の日本人にとって、(言葉が出来る出来ないに関わらず)「困ったな」と思うことの一つに、理髪問題があります。カットに納得できるか、衛生面は大丈夫か、必要のないパーマやカラーを強要されないか等、サービスを受けるには勇気が必要かもしれません。中国で髪を切る所といえば、外で散髪する店から高級サロンまで様々で、大都市には日本人美容師を抱えている店舗もあります。郊外都市に住んでいる日本人が長時間をかけて都会の日本式美容院を訪ねることもよくあり、北京で日本人美容師が入国管理法違反で拘束された案件は記憶に新しいところです。

 中国の理髪業・美容業は、2005年に「美容美髪業管理暫行弁法」が施行され、理髪店営業に当たっての法律が規定されました。「美髪」とは「手指の技術又は機器により洗髪・ヘアケア・ブリーチ・パーマ等商品を用いて、消費者にヘアスタイリング・カットパーマ・髪質改善等サービスを提供する経営行為」と定義されており、営業には資格を持った専門技術者が必要なこと、安全基準を満たした機器を使うこと、価格を明確にすること、風俗行為禁止等が規定されています。日本の理容師・美容師が国家資格であること、清潔さや価格が比較的明確であるのに比べ、中国では、免許がなくても美容師になれる、サービスと価格が不透明、いかがわしい店もある、といった声が多く聞かれます。この法律はそういった声を踏まえ、業界の健全な発展を目指しているようにも見えます。

 しかし、理髪業界はあまり芳しくないようで、2024年中国美髪業行協会報告によると、利用客数は5年前に比べて28.6%下降、店舗数は16.3%減少、また業界市場規模においても2020年2,432億元だったのに対し、2024年には2,156億元、11.3%減少しているそうです。原因の一つは、競争激化し、主に町の床屋さん的な伝統店が淘汰されていることが挙げられます。2015年第1四半期、一線都市の店舗数は1000人あたり1.6店舗で、欧米都市の0.8~1.2店舗に対し高密度になっています。

 更に、美容院に頻繁に行かない人も増えてきました。2024年25~35歳の平均理髪回数は45日に一回で、2015年平均30日に一回に比べ頻度が長くなっています。中国青年発展基金会の調査によると、1990年代、2000年代生まれの60.2%が「頻繁に理髪しなくても気にならない」と答えており、1980年代生まれ32.6%の約半分、若い世代にオタク文化が浸透し、外見に気を使わなくなった人が増えているせい、とも言われます。また、ネットで理髪用品を買いやすくなったこともあります。2024年ECサイトでの理髪用品売上額は435億元で、前年比26.3%増、自宅で手軽にスタイリングできるようになっています。

 そんな中でも、若い理容師を雇い、ネット予約や会員優待制度、スタイリッシュなイメージ作りに成功し売上を伸ばしている店舗や、サービスの原点や新技術を学び直している伝統店、地域に根ざし高齢者介護と連結させてサービスを提供する店舗等、利益確保に努力している店舗も数多くあります。「理髪」は今では数少なくなった、オンラインでは不可能で、人と人とが触れ合うサービスの一つです。中国政府が国内消費活動を後押しする中、まだまだ伸びしろのある業界と言えるでしょう。

※小李談財事 理髪店并不受電商影響,為何生意却越来越差?過来人説出真相等を参照・整理