2023年には、中国のコーヒー産業の市場規模は2654億元に達したと言われます。都市部ではコーヒーショップが増えていることに目を見張るものを感じられます。中国のコーヒー消費量はここ10年間で167%増、35万トンに達し、全国のコーヒー愛飲者の総数は4億人に迫る勢いで、消費者数、1人当たり消費量共に成長を遂げています。また、全国のコーヒーショップの総数は2023年には約15万7000店に達し、上海が9553店で1位となっています。また、中国のコーヒー消費市場は優位だったインスタントコーヒーから、より多様化しつつあり、挽きたての香りが高いコーヒーが急速に消費の主流になってきています。
中国のコーヒー市場は急速に発展していると言いつつも、1人当たりの消費水準では日本、韓国、欧米などの成熟した市場とはまだ大きな差があり、それだけ大きな潜在力を持っています。2023年以来、リーズナブルなコーヒーは中国の大・中・小都市で良く売れるようになり、多くのコーヒーブランドが三線都市や四線都市へと広がっています。例えば、スターバックスの2024会計年度決算報告によると、中国の店舗数は7,596店舗、1,000近くの県級市でも店舗を持っています。直近四半期の2024年7~9月、中国で開店した新規店舗は290店舗オープンし、内陸部の河南省平頂山市や甘粛省酒泉市など、新たに78の県級クラスにも進出しています。
中国のコーヒー豆の栽培地は、雲南省がメインであり、全体の95%を占めています。雲南省は中国の南西部に位置する省で、ミャンマー、ラオス、ベトナムの国境と接し、森林が多く自然に恵まれた秘境のような場所で、チベットと四川省を走っている横断山脈が雲南省にも続きます。
この雲南省は日本でもよく耳にする普爾(プアール)茶の産地・普爾(プアール)市があることが知られていますが、このお茶栽培の環境は、標高900?1,200mの高原地帯にあり、昼夜の気温差が大きいことから、中米のコーヒー生産地にも似たその環境は、上質なコーヒーを栽培するのに最適な条件が揃っています。
雲南省で栽培されているコーヒーはアラビカ種が主であり、元々コーヒーの樹が自生していたわけではなく、20世紀初めにベトナム(仏領インドシナ)から雲南に赴任したフランス人宣教師が導入したと言われています。当初は地場消費を主体に栽培は増え、1950年代はソビエト連邦への供給目的で栽培が拡大しました。しかし、その後ソ連との関係悪化(中ソ対立)の影響を受け、栽培は一時落ち込みました。
しかしながら、コーヒー産地としての大きな転換期は1988年、外資企業「ネスレ」が同地をコーヒーの生育基地として展開したことによります。ここからコーヒー産業化への道筋が作られ、栽培、生育、収穫、加工技術が高まりました。雲南省政府はグローバル企業の招致と共に、第十二次五か年計画(2006-2010年)でタバコ、茶葉に続く三大産業と位置付けて栽培を支援しました。気候変動が問題となり、コーヒー豆の生産にも危機感が増している昨今、日本でも身近になるかもしれない『中国コービー』の今後に注目したいところです。
東日本コーヒー商工組合:「中国で生産されているコーヒー。急成長するコーヒー市場事情も解説」等を参照・整理