一時期、日本でも大ブームを起こし、既に下火になってしまった『タピオカミルクティー』、甘いミルクティーともちもちとしてツルツル食感の黒タピオカのコンビネーションが楽しく、「よく飲んだなあ」という方もいらっしゃるでしょう。

日本語で『タピオカミルクティー』と呼ばれる飲み物の発祥地は台湾です。もともと、お茶をカクテルシェーカーで泡立てて飲む「泡沫茶(泡のお茶)」があり、ミルクティー「泡沫奶茶」もその一種でした。そこに「粉圓(タピオカ)※キャッサバの根茎から製造した澱粉」を加えるようになったのが1985年ごろで、「珍珠奶茶」の名前で出回るようになりました。暑い気候の台湾では、スイカジュースをはじめとして甘い飲み物を好む傾向があり、1990年後半には「珍珠奶茶」を看板に掲げたドリンクスタンドがまさに雨後の筍のように出現しました。メニューもタロイモや麦香等フレーバーのミルクティー、スイカやパパイヤジュース、緑豆フラッペや小豆フラッペ等が一般的で、日本ではあまり馴染みのないものもありました。

日本では、2013年に「珍珠奶茶」の元祖とも言われる『春水堂』が代官山に店を開いたことを皮切りに、LCCが台頭したことによる台湾ブームとインスタグラムの「SNS映え」を背景にして、タピオカブームが巻き起こりました。しかし、2020年を過ぎるとあっという間に姿を消してしまいました。

この原因については、中国グルメプラットフォーム「餐飲O2O」で「①SNSアップに飽きられ宣伝効果を失った、②商品がミルクティーのみの単一であった、③味が一般の日本人好みに改良されなかった、④値段が高めだった、⑤飲み残しやカップ・ストローのごみ問題が発生した」と分析しています。

一方、中国では台湾系列のミルクティーはまたたく間に広がり、全国的に普及しました。2023年のミルクティー市場規模は1,500億元を超えると見られ、また今後も拡大し続けると予測されています。その中でもダントツの店舗数を誇るのがドリンク&アイスクリームスタンド『MIXUE(ミーシュー、蜜雪冰城)』です。鄭州の大学生が起業したこの店は、現在36,000店舗、うち中国国内店舗は32000店にのぼっています。MIXUEの特徴は圧倒的な低価格で、他店に比べ半額以下の価格帯で販売していることです。

中国では大きな市場に発展したこの業界ですが、新規店が相次ぎ、新商品の開発も活発で競争が激化しています。更に、店舗スタッフや賃貸にかかるコストが年々上昇し、赤字企業も発生しています。このような厳しい状況の中で、各社が取った戦略の一つが「海外進出」で、シンガポールやマレーシア、タイ等海外展開を図っています。『MIXUE』も2018年にベトナム・ハノイに初出店以来、韓国やタイ等アジアを中心に11か国・4,000店舗を展開し、2023年には、既にブームが去った日本ですが、千葉・池袋・表参道等で新店舗をオープンしました。海外でも低価格路線を貫き、『タピオカミルクティー』は他店が500円を超える中、300円台で販売しています。また、キャラクター「スノーキング」を前面に押し出し、ブランド戦略にも力を入れているようです。

『タピオカミルクティー』店は、元手も要らず誰でも手軽に始められる事業、ということで過去一気に増えた感がありますが、日本ではブームが去り、まだまだ定着した感があるとは言えない状況です。日本にブーム再来はあるのか、中国からの参入の動向が気になるところです。

JBpress「“激安”ミルクティー店の中国最大手MIXUEが日本進出」等を参照・整理