現在の若者達が輝かしい未来を謳歌している、というわけでもなさそうです。ちょうど1年ほど前からSNSで『四不青年』という言葉が目立ち始めました。「恋愛、結婚、家、子女」の4項目を否定するという意味で、恋愛や結婚に消極的で、子供を作らず、家も買わない、という一部の若年層の特徴を現した言葉です。
最近、就職難のためお金がなく、未来の社会に希望が持てない現象を表していますが、更に否定の数が増え、『十不青年』という言葉が顔を出すようになりました。
『十不青年』の否定する10項目は「献血、寄付、結婚、子女、家、宝くじ、株式、基金、高齢者扶養、感動」とされ、基本的にお金がないので、寄付ができないし、宝くじも買えず、株式や基金への投資や出資もできない、更に高齢者介護や献血するような余裕もなく、更に結婚もできないので、子女もできず、家も必要なく、淡々と生きているだけなので感動することもないとうことのようです。
近年、中国では、日進月歩の社会発展の道を突き進んでいます。日々、エスカレーターを駆け上っていくような勢いで、求められる努力とプレッシャーはかなり大きいものでしょう。そんな中、「巻・躺・潤」の漢字が流行しています。若者達は入学試験や就職活動で常に競争に巻き込まれ(巻)、疲れて閉じこもり何もしないで寝そべる(躺)、または自分の置かれた環境から逃げ(潤)ようとします。当然タフで日々努力し、競争をものともしない若者がいる一方で、そこから溢れ出てしまう若者も多く存在します。
また、頑張って勉強して高学歴で卒業して、高収入の職に就いたとしても、996(朝9時から夜9時まで、週6日労働)で働くことが必要で、身体を壊し仕事を続けられなくなります。或いはコロナの流行や学習塾の制限等の新政策の影響で職を失う若者も出てきています。
そんな環境下、若者達の新たな就職先が「親元」です。近年、親の世話をすることで、親から給与をもらう子供、「専業子女(全職児女)」が出現しています。実家の親と同居して食事を用意したり買い物に行ったり、一緒に散歩したり旅行に連れていく等々をすることで親の収入の一部を給与として支払ってもらう、というものです。前提には、親が年金をはじめとするある程度の収入があり、子女を「雇える」状況にあることになります。
「専業子女(全職児女)」については、「新たな親のすねかじり」、「仕事のストレスから逃げているだけ」という批判がある一方で、「一種の仕事であり新たな生活スタイルだ」という肯定的な意見や、「次の仕事や資格試験に備えるための過渡期」と捉える意見もあります。しかし、その背景にあるのは、コロナの影響や国際環境による中国経済の不透明さや、現在都市部の若者の5分の1が失業しているという若年層の就職難、特に高学歴者が増加し、彼らの労働市場での相対価値が下がり、供給が需要を超えているという事態であり、決して明るいものではないです。
老子の思想に「足るを知る者は富む」とは言いますが、若い人が諦観を達観として生きざるを得ないというのは悲しい事ではないでしょうか。中国政府も若者の雇用安定のための政策を打ち出していますが、効果のある処方箋が待たれます。
NEWSポストセブン「結婚や子供、家等を諦める若者達」等を参照・整理