6月の中国は大学入試「高考(ガオカオ)」の季節です。今年は6月7日から8日にかけて、行われました。また、今年は端午節の祝日と重なり、「いい事がある1日でありますように」と、受験生は吉祥を祈りました。共通テストと二次試験があり、私立大学も利用し、比較的チャンスの多い日本の大学入試とは異なり、中国は一発勝負の1回の高考(ガオカオ)の結果で大学が決まってしまうほど、延いてはその後の人生まで左右すると言われる重要な日です。今年は去年より51万人多く、過去最高の1,342万人が高考(ガオカオ)に挑みました。

 受験生にとっては通う高校も重要になります。日本でも親が有名大学(重点大学)合格者の多い高校に子どもを通わせたがる傾向がありますが、中国でも先ず各省や各市にある重点高校に入学します。そのために受験生のいる親は重点高校のある学区に引っ越すことも厭いません。かつては進学率も低く、経済的にも余裕のない中、一部のトップエリートが目指す場所だったはずですが、今では有名大学(重点大学)への競争が特に激化しています。高考(ガオカオ)は基本的に国語、数学、外国語が必須科目で、文科総合または理科総合いずれかを選択するので、高校生は理科系か文科系かを決めて勉強することになります。クラブ活動や修学旅行等課外活動はほとんどせず、ひたすら死に物狂いで勉強します。

 高考(ガオカオ)の結果(今年は6月24日)が受験生に通知されると、受験生は予め公表されている各大学の合格最低点と、自分の成績を突き合わせ、希望校をリストアップしていきます。各大学は学科別にそれぞれ合格最低点が設定されていて、それを見ながら希望順位をつけて選んでいきます。この大学選びもなかなか難しく、「点数3割、志望7割」とも言われるそうです。特に有名大学(重点大学)では、基本的に第1志望に書いていない受験生を取りません。志望校をうまく選ばないと、点数では入れるはずだった大学に入れないこともあります。第3志望までで受からなかった受験生は高考(ガオカオ)に失敗した、と言っても過言ではなく、実際「もっといい大学に受かるはずだったのに」というケースも少なくないそうです。

 また、受験生がどこの高考(ガオカオ)に参加するかによっても、行ける大学に影響してきます。決まった数字ではないのですが、各省ごとに定員枠が存在しています。各大学は、その大学の所在地の地域から最も多くの受験生を受入れる傾向があり、例えば、北京大学と清華大学の2023年度受験者数と受入数の割合を見ると、北京市受験生の合格率は1.02%、上海市受験生0.44%に対し、広西省や雲南省からの受験生の合格率は0.026%と低くなっています。高考(ガオカオ)は統一試験、と言いながら、各省で作成した問題も出題されますので、ある意味地域の実情に合わせた試験問題となっています。よって、大学が所在地の受験生を多く受け入れる理由があるわけです。逆に少数民族優遇政策により、少数民族の受験生は点数がプラスされる制度もあり、これもまた一部の受験生にとって有利となります。

 中国の大学進学率は既に50%を超えていますが、半数以上の高校生が、公平なのか、理不尽なのか、よくわからないこの競争を経験するわけです。受験生に幸が訪れることを願うばかりです。

               中国の科学技術「中国の大学入試~高考」等を参照・整理