今年はパリオリンピックが開催され、平和の祭典として盛り上がりました。中国のメダル獲得数は91個で第2位、金メダルは1位のアメリカと並び40個にのぼりました。中国では、この世界大会のような目立つ場だけでなく、一般の人々が楽しむ、スポーツのすそ野が急速に広がっています。

 中国のスポーツ産業の勃興は、2014年の国務院による文書「スポーツ産業の発展加速とスポーツ関連消費の促進に関する若干の意見」の発表が重要な節目になっているようです。この発表により、一般スポーツにも目が向けられるようになり、中国国家統計局と国家体育総局が発表したデータによると、14年から22年の間に中国スポーツ産業の市場規模は1兆3574億7100万元から3兆3008億元に、付加価値額は4040億9800万元から1兆3092億元に拡大しています。対GDP比はわずか0.6%から1.1%にまで上昇しました。

 また、スポーツの広がりとともに、ここ10年のスポーツ用品製造業の多様化・ハイテク化の成長もめざましく、スポーツイベントが際立った経済効果をあげるようになりました。そして、「eスポーツプレーヤー」「アスレティックトレーナー」などの新しい職業が誕生し、新たな雇用を生むブルーオーシャンとなっています。

2022年北京冬季オリンピックを契機として、ウィンタースポーツが流行し、スキーやスケート用品が販売され、スキー場やスケート場に人が集まりだしました。2023~2024年のウィンタースポーツ参加者数が延べ2億6400万人にのぼっています。またサマースポーツのサーフィンとパドルボード関連の消費者数は100万人を超え、消費規模は全体で10億元を上回っています。その他、キャンプ、釣り、馬術などの種目でもアウトドアスポーツの発展をリードしています。

 消費者層別では、「80後」「90後」と呼ばれる1980年から2000年に誕生した30~40歳代がアウトドアスポーツ消費の主力となり、2023年のアウトドアスポーツ参加者全体に占める割合がそれぞれ37.1%、35.2%となっています。消費頻度をみると、2023年のアウトドアスポーツ関連消費の1人当たり注文回数は新型コロナ感染症拡大前の2019年と比べて15.0%増え、2024年上半期(1~6月)には前年同期比59.8%増加しました。

アウトドアスポーツ愛好家の年平均消費額は比較的高い水準を維持し、1種目で2000~5000元(4~10万円程度)です。種目別に見ると、2024年上半期にはサイクリングや釣り、パラグライダー、サーフィン、ヨットの注文量が前年同期比で増加したほか、アウトドアスポーツの消費は一線都市である北京、上海、広州、深圳の4大都市と成都、重慶、杭州など15の新一線都市に集中しています。

ひと昔前はあまり好まれなかったマラソンも、健康志向の高まりの中、愛好者が増えています。去年は参加者800人以上規模のマラソン大会が699回開催され、参加者数は累計605万人を超えました。大規模な都市型マラソン大会は応募者数が20万人をこえ、大都市で開かれた大規模マラソン大会の総収入の平均値は2910万元になり、人気イベントとなっています。

お金をかけて体を動かし余暇を楽しむ、という時間の過ごし方は、プレッシャーの大きい中国の僅かな息抜き、なのかもしれません。

36krJapan 「中国、サーフィンなどのアウトドアスポーツが人気」等を参照・整理