中国と言えば「人口世界一」というイメージですが、2023年の世界一人口所多い国はインドの14億2500万人で1位となり、中国は2位の14億900万人、前年から208万人減少し、また出生数は902万人となり、中国の少子・高齢化傾向の加速化が顕著です。

中国の人口減少、少子・高齢化現象は加速傾向にあり、中国国家衛生健康委員会直属のシンクタンク・中国人口発展研究センターの試算によると、中国の総人口は2026~2030年の期間は年平均230万人ずつ、2031~2040年には370万人ずつ、2041~2050年には620万人ずつ、2050年以降になると年平均1000万人の減少を予測しています。2023年の一人の女性が一生のうちに産む子供の推計人数を示す「合計特殊出生率」は2022年時点で1.09と、統計以来最低数を記録しています。また、65歳以上の高齢者人口は2億1676万人で総人口位の15.4%を占め、前年の14.9%から増加しています。

1970年代、中国では急激な人口増加を抑制するために、「晩、稀、少」(遅く、間隔を空け、少なく産む)という「計画出産政策」をとりはじめました。1978年には「できるだけ1夫婦あたりの子どもは1人とし、多くても2人とする」との方針が国策として示され、1979年には「計画生産」の方針の「多くても2人とする」という文言も除かれ、上海市等を皮切りに「1人っ子政策」が開始されました。

その後、中国の生産年齢人口(15~59歳)は2011年をピークに減少に転じ、徐々に少子化の進展に伴う労働力不足や国内の投資・消費の縮小等が問題視されるようになり、そのため2016年には「1人っ子政策」は撤廃され、全ての夫婦に「第2子の出産」が認められるようになりました。2021年には夫婦1組に3人まで子供をもうけることを認めるようになりました。

2024年の出生率に関しては、3年近く続いたコロナ禍の影響による出生数減少の揺り戻しや、今年の干支は縁起が良いとされる辰年であることもあり、子どもを産みたがる夫婦が増加することが見込まれています。しかし、それは一時的であり、都市部での生活費や教育費の高騰や、キャリア重視の女性が増えていることで、子どもを産むことを許す政策は少子化対策にはなっていないのが実情とされています。

このように国の中央政策の転換を受け、各地で子育て環境を整える対策を打ち出し、産休や育休・出産介護休暇の新設や拡充が進んでいます。産休日数は、多くの地域で延長され、 北京市、天津市、上海市等16市では、国が定める「女性労働者の産休98日」に加えて、さらに60日上乗せされ、計158日となっています。浙江省、河北省、内モンゴル自治区は第3子以上の出産で産休を90日に延長し、計188日と定めています。

また、「第3子政策」を促進するため、地域による財政支援の拡充が重要視され、各地の条例改正によって、出産予定の夫婦に対して出産手当金や育児補助金制度を導入・強化するとともに、育児補助金制度について、第2子、第3子以上の子供を持つ家庭を優遇する地域が相次いでいます。居住環境についても地域によっては子育て家庭の住宅ニーズに対応した優遇措置を実施しています。

ちなみに日本の2023年の出生数は▲5.8%減、出生率は日本の1.26に低下し、総人口に占める65歳以上の割合は29.1%で、高齢者人口の割合は世界一です。中国、特に地方の政策が少子化に歯止めをかけることができるのか、日本のように高齢化に進んでいくのか、人口規模が大きいだけに世界に与える影響も大きそうです。

東洋経済ONLINE「中国の人口『少子高齢化の加速』で2年連続減少」等を参照・整理