今年の夏は40度を超えるような異常な暑さが続きました。数年前までは30度を超えると暑かったのに、近年は暑い日が続いて体調を崩されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ナマコ(海参)は、夏目漱石が『吾輩は猫である』の中で「はじめてナマコ(海参)を食べた人の勇気や精神力には敬服するべきだ」と書いているように、グロテスクな姿が印象的で、日本では冬の味覚として食べられることが多いです。一方で、中国では乾燥ナマコ(海参)がフカヒレや乾燥アワビ、ツバメの巣などに並ぶ高級食材または漢方薬として珍重されています。ナマコ(海参)は中国語で「海参」と書きますが、「人参(朝鮮人参)」は山から採れる高級食材・漢方薬であり、「ナマコ(海参)」は海から獲れる高級食材・漢方薬であることに由来する、と言われます。
乾燥ナマコ(海参)は栄養価が高く高たんぱく質、しかも低カロリーで、コラーゲンやコンドロイチンを多く含み、皮膚細胞に水分を保たせて弾力とハリをもたせる作用があり、共に美容と健康に良いとされる成分です。また、心臓と腎臓・肝臓機能に働きかけ、造血作用による疲労回復や、免疫力アップ、性機能低下、強壮、疲労回復、冷え、老化防止などに効果があります。元気を付けたい、貧血気味、皮膚が乾燥気味の時に積極的に摂ると症状の改善が期待できます。
ナマコ(海参)は、実は夏が苦手で、水温が18度以上になると、冬眠ならぬ夏眠状態となり暑さをやり過ごします。水温が下がると活動しはじめ、主に砂や泥の海藻や微生物を食べ、その砂を排泄し海を綺麗にしています。歩く速度は1分間に約8㎝、ゆっくりゆっくりと動きます。人が乾燥ナマコ(海参)を食すにも時間がかかり、火を入れたり冷ましたりを繰り返しながら一週間程かけてゆっくりゆっくり戻していきます。
中国でも各海沿いの地域でナマコ(海参)がとられていますが、養殖がメインとなっており、三大産地である大連の遼寧ナマコ(海参)、青島や煙台の山東ナマコ(海参)、福建省の南方ナマコ(海参)が有名です。2023年のナマコ(海参)の総産出量は29.2万トンにもなり、価格的には低水準、供給がだぶつき気味になっています。7月には大連で「打開への路」と冠した2024第2回ナマコ(海参)大会が開かれ、ナマコ(海参)の宣伝活動や加工技術の向上、販売チャネルの開拓等について話し合われました。
中国では、日本の乾燥ナマコ(海参)は「海の黒いダイヤ」と呼ばれるほど、中国では大人気でした。潜水漁によってとったナマコ(海参)を数十日かけ丁寧に乾燥させる等、伝統の中で培った方法で丁寧に生産された乾燥ナマコ(海参)は、香港から中国へ向けて非常な高値で取引されていました。東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出により、中国では日本の水産品の輸入を全面停止した影響で、2023年の冬にはナマコ(海参)漁を見送った地域が相次ぎました。高級乾燥ナマコ(海参)を取り巻く水産品の産業チェーンに打撃を与えています。
これから涼しくなり、ナマコ(海参)が夏眠から目覚める時期を迎えます。今年の冬のナマコ(海参)漁が精一杯できるかどうか、自然環境、行政対応、国際問題などなど、絡み合う糸は複雑そうです。
能登ナマコ(海参)「ナマコ(海参)を巡る食文化・効能」等を参照・整理