中国の「国考」と呼ばれる国家公務員試験は、超難関といわれています。毎年、10~11月の間に実施され、2009年に国家公務員試験の出願者数が初めて100万人を超えて以来、その後10年余りの出願者数は年々増え、いずれも年間100万人以上となっています。昨年は、書類審査を経た受験者数が初めて200万人を突破し、倍率はなんと約68倍でした。2023年度の国家公務員試験は、採用規模は3万7100人で、募集職位は合計1万7655の職位が設けられており、主に税務、消防、税関、鉄道警察等に集中しています。4年連続で採用が拡大されていますが、人気職位の応募倍率は、なんと6000倍近くにもなっています。

今年の国家公務員試験は、大きな特徴が2点あります。一つは、採用政策が新卒者に偏っていること、もう一つは、職位に対する学歴、専攻、職歴等の要求がより具体的になったことです。これにより、出願者は自身の状況に照らして、より自分にマッチした職位を選択できるようになりました。一部の職位では、学歴要件の引き下げ、専攻要件の緩和、勤続年数や経歴の制限なし等の措置が取られ、受験のハードルが下がったことも、一部の職位の人気を高めている原因です。

新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷等で、中国での不動産産業やIT関連等の民営企業は業績不振となっています。中国の公務員試験で、採用条件に「実務経験」を問うものが多く、日本のように新卒優先ではないことから、民営企業である程度の専門的スキルを身につけた人々が公務員試験に挑んでおり、競争の激化につながっています。

また、中国では、大学の新卒の人数が年々増加し、就職難が顕著になってきています。これまでは景気が良かったため、就職はそれほど難しくはなく、名門大学を出れば、国家機関や有名な大手企業に就職ができる人も多くいました。しかし、ここ数年は、雇用市場が大卒を吸収しきれなくなってきており、大学新卒者の就職率は20%を割り込んでいます。2020年の大学新卒者は874万人で、約700万人は就職浪人となっており、その一部が公務員試験を受験しているとみられます。大学を卒業したが、希望する仕事が見つからなかったため、とりあえず大学院へ進学するという動きも活発になってきています。昨年の大学院の受験者数は457万人に達し、2020年より80万人増え、過去最多記録を更新しました。しかし、修士課程の学歴を取得しても、それに見合った仕事に就くことができない人も増え、「高学歴貧乏」等と言われたりしています。

公務員は、鉄でできている飯の茶碗、(*中国語で「鉄飯椀」)と言われ、転じて『絶対に潰れない職場の安定した職』という意味です。実際、公務員の離職率は毎年0.05%で、よほど自ら過ちを犯さない限り、職を失うことはほとんどありません。こうした背景から、公務員人気は過熱しています。しかし、一方、公務員でも消防局や統計局調査隊(日本の国勢調査調査員に相当)、鉄道警察官等危険が伴うポストは不人気です。深刻な就職難により、若者は「安全・安定・安泰」の職業を求めるようになってきていると言えます。

(AFPBB News等を参考に整理)