今回は、寧波の学生たちの生活スタイルや価値観を紹介します。

中国では、毎年6月になると「高考」(全国統一大学入試)が行われます。日本でいう大学入学共通テストで、この試験の成績が若い人々の未来を大きく左右します。試験は1000点満点で、自己採点をして受験する大学を決めます。多くの学生は、全国の4年制大学約1300校の中で、国家重点大学(約110校)に入学したいと考えています。重点大学に入学できれば、公務員や国営企業などに就職できる可能性が高いからです。重点大学に入り、よい就職先を見つけて、高い収入や安定した生活を手に入れたい。こうした考えは学生のというより、親の願いです。

大学に入学すると同時に、寮生活が始まります。高校も寮生活なので、ルームメイトのいる共同生活には慣れています。寧波大学の学生寮は4人部屋で、部屋にはトイレ、洗面台、シャワー室があります。厨房はありません。食事は学生食堂や宅配、外食になります。授業は朝8時から夜8時25分まで行われ、さらに10時まで自習できるように教室が開放されています。日本の大学生に比べて授業数が多く、予習復習やテスト準備に追われて、ほとんどの学生がアルバイトやサークル活動をしていません。それでも高校までの勉強漬けの生活よりずっと楽しいと、学生たちは言っています。

学生たちにとって、大学は受験勉強の重圧から解放され、自分と向き合う場です。小・中・高では、勉強だけできれば良かったので、家事をしたことがなく、自分の将来を考えたこともなかった、そういう学生にたくさん出会いました。しかし、大学ではそういうわけにはいきません。成績に関係なく、多くの学生が目標のないことや未来を描けないことに悩んでいます。経済の急速な発展は競争を激化させ、格差が拡大しました。実力があっても、希望する職業や会社を見つけることが難しくなっています。学生が、将来に不安を感じるのも仕方ないかもしれません。

それでも、幼くて頼りなく見えた大学1年生が、4年生になると就職先や進学先を決めて巣立っていく姿を見てきました。4年間の大学生活は、学生が自分と対話し、生き方を考えるよい機会だったのだと思います。今年の6月、中国の大学新卒者が初めて1000万人を超えます。若い人々の未来が明るいことを願っています。

【寧波大学正門】

【寧波大学学生寮】

寧波大学外国語学院外籍教師  

静岡県立大学グローバル地域センター客員講師

(静岡県日中友好協議会 交流推進員)

横 井 香 織