「ゼロ・ウェイスト」とは、「ごみをゼロにする」ことを目標に、廃棄物をできる限り減らそうとする世界的な活動です。1996年にオーストラリアの首都キャンベラが世界で初めて「ゼロ・ウェイスト」を宣言して以降、ニュージーランド、北米、欧州などの各都市を中心に広がってきました。中国では、これを「無廃都市(むはいとし)」と称し、国家規模で建設を推進しています。2027年までに国内の約6割の都市で実施し、2035年までの全国普及を目指しています。具体的な施策としては、ごみの分別と資源化の徹底、プラスチック製品の利用制限、主要経済圏内における産業廃棄物の管理やグリーン化の徹底などが挙げられます。こうした積極的な姿勢が評価され、今年3月30日の「国際ゼロ・ウェイスト・デー」において、国連事務総長直属のゼロ・ウェイスト諮問委員会が発表した「世界のゼロ・ウェイストに向けて進む20都市」に、中国からは浙江省杭州市、海南省三亜市、江蘇省蘇州市の3都市が選出されました。
経済成長と環境対策を両立する「杭州市」のスマート戦略、選出された都市の一つである杭州市は、人口約1,300万人、GDP2兆元(約42兆円)を超える超大都市です。しかし同市では、2021年から2024年にかけて、市民1人あたりの1日平均ごみ排出量を1.06kgから0.99kgへと減少させることに成功しました。高度な経済成長を続けながらも、環境対策を着実に進めてきたのです。スマート廃棄物管理プラットフォームの構築、市内全域のごみ収集拠点、収集車、焼却施設、生ごみ処理施設をリアルタイムで接続するシステムを整備しました。ごみの収集から処理までの全プロセスを可視化して効率性を極限まで高めた結果、2020年末までに「都市ごみの埋め立てゼロ」を達成。さらに、一般産業廃棄物の再資源化率は98%以上を記録しています。市民の参加意欲を促すリサイクルアプリの活用、リサイクルアプリ「Huge Recycle(巨大回収)」を導入し、市民が資源回収に協力すると、買い物に使える「エコクレジット」が付与される仕組みを構築しました。これにより分別へのハードルを下げ、2022年のサービス開始以来、約40万トンもの資源回収に成功しています。地域密着型のモデル区「ゼロ・ウェイスト・セル」、学校、住宅地、商業施設などを単位としたコミュニティモデルを展開しています。ある地区では紙コップを集める専用の「リサイクルバス」を運行させ、また別の地区ではバイオテクノロジーを用いた生ごみ処理を導入するなど、それぞれの特性に合わせたユニークな工夫が凝らされています。
日本の現状と、今後の展望、中国政府が国家戦略として2035年までの全国展開を見据える一方、日本国内に目を向けると、古くから「ごみゼロ運動」という概念自体は根付いていました。徳島県上勝町や福岡県大木町、東京都などが「ゼロ・ウェイスト」を宣言しており、今回の国連の「20都市」には横浜市が選出されています。しかし、日本における現在の取り組みは自治体ごとの個別の動きにとどまっており、廃棄物ゼロをシステマティックかつデジタル技術と融合させて網羅的に目指す動きは、まだ全国規模の潮流には至っていません。中国の事例のように、都市のインフラや市民生活のシステムそのものをアップデートしていく「ゼロ・ウェイスト」の視点は、今後、日本の都道府県や国レベルでの政策を考えていく上でも、大いに参考になる先進モデルと言えます。
ELEMINIST:中国杭州市、国連「世界のゼロ・ウェイスト都市」TOP20に選出等を参照・整理