卒業後も続く競争中国では、大学卒業者の数が年々増え続けています。2024年には過去最高の1,179万人、2025年にはさらに増えて1,222万人となる見込みです。しかし、2024年の就職率は55.5%と低く、毎年卒業後に仕事を見つけられない人が積み上がっていく「雪だるま式の未就職問題」が深刻になりつつあります。

[就職難の原因とは]

企業の採用縮小:景気が低迷し、新卒採用を絞る企業が増加。人材のミスマッチ:企業が求めるスキルと、卒業生の専攻や経験が合わない。 例えば、AI・新エネルギー・航空・ロボットなどの新興分野ではオペレーターや技術系人材の需要が急増しています。一方で、伝統的な製造業や不動産、教育分野では求人が減っていて、特に文系出身者の就職が厳しくなっています。

[求められる人材とは]

企業が注目するのは、学歴だけでなく次のような即戦力となる力です。実務経験(インターンや現場での経験)。専攻の専門性(企業と関係する分野かどうか)。語学力(特に英語)。問題解決力・実践力。つまり、中国では「どの大学に入るか」「どんな学部・学科を選ぶか」が就職の成否を左右する重要な選択となっています。

[教育熱と高学歴のギャップ]

一人っ子政策や経済発展を背景に、教育への期待が高まりました。高等教育進学率は2000年の12.5%→2024年には60.8%。親の「高学歴で立身出世してほしい」という願望。学生自身も管理職・クリエイティブ職などを目指し、「接客や地味な仕事は避けたい」という傾向。こうした希望と現実のズレも、就職難の一因になっています。

[ホワイトカラー vs ブルーカラー]

現在、ホワイトカラー(事務・営業など)の求人倍率は1.0未満。つまり「応募者が多く、職が足りない状態」です。一方で、ブルーカラー(技術・現場作業など)の求人倍率は1.0以上。ただし、大学卒業者の多くは「大卒なのに肉体労働はできない」といったプライドや面子から、そうした職に応募せず、結果として無職が続く人も増えています。

[職業訓練への誘導と課題]

政府は、若者に対して「大学進学」よりも職業訓練校への進学を促しています。修了期間:3年。取得資格:機械技術者・オペレーター・看護師・ロボットエンジニアなど。問題点:「成績が悪い人が行く学校」というイメージ。「給与が大学卒より低い」という先入観。このため、訓練校への進学希望者は思うように増えていないのが現状です。

[今後の展望]

大学側の学部見直しや制度改革などの議論も進んではいますが、大学卒業者の就職難の根本的な解消にはまだ時間がかかると見られています。中国の若者たちは、競争社会の中で大学卒業後もなお、進路に悩み続ける状況にあります。

※時事通信 大学生の就職難が深刻化 卒業者数が過去最高 等を参照・整理