近年、中国国内では不動産不況が問題となっている一方で、中国人による日本の不動産購入件数の増加、いわゆる「爆買い」現象が注目されるようになりました。
【人気のタワーマンションと中古物件】
一般的に、20階建て以上のマンションは超高層マンション(タワーマンション)と呼ばれています。首都圏における過去20年間の新築マンションのうち、約24%がタワーマンションに該当しました。大手ディベロッパーにとっては、大量の住戸を一括して販売できるほか、高層階の価格を高く設定でき、低層階はオフィスとして賃貸可能であることから、タワーマンションの建設に積極的に取り組んできました。今後も新築マンションに占めるタワーマンションの割合は増加すると見込まれています。このような背景から、富裕層に属する中国人による購入件数も増加しました。また、中国人は新築物件だけでなく中古物件にも関心を寄せています。中国人向けの日本不動産情報サイト「神居秒算」のデータによれば、中古物件では東京都の大田区と板橋区の購入件数が突出して多くなりました。これらの物件は民泊用にリフォームされ、外国人旅行者向けに貸し出されるケースが多く見られました。
【温泉旅館も人気】
古くからの温泉街にある老舗旅館も売却対象となりました。人手不足、経営者の高齢化、施設の老朽化に加え、新型コロナウイルスの影響による経営悪化が重なり、温泉旅館の廃業が相次ぎました。こうした状況下で買い手として登場したのが中国の富裕層でした。日本国内で売却しようとすると価格が半値にまで値切られることが多かったのですが、売却先を中国に広げることで希望者が増え、なかには買値を上乗せする業者も現れました。また、日本資本が老朽化した設備を敬遠する傾向があるのに対し、中国資本は新たな設備投資を惜しまず、旅館経営を引き継ぐ姿勢を示しました。売却側にとっても悪くない選択肢となりました。
【お買い得な不動産】
中国富裕層が日本の不動産を選ぶ主な理由として、投資先としての相対的なリスクの低さ、そして円安による割安感が挙げられました。日本円ベースではマンションなどの不動産価格は年々上昇していますが、中国元に換算すると価格上昇は限定的でした。たとえば、日本円では2001年の中古マンションの平均契約価格は2,500万円未満、2011年まで約3,000万円で推移していましたが、2024年には7,000万円に迫る水準となりました。一方、中国元建てでは、2001年に約160万元、2011年に約270万元、2024年でも約310万元と、過去10年間の上昇幅はわずかでした。つまり、日本の不動産は一般的な日本人にとっては手が届きにくくなる一方で、中国の富裕層にとってはますます「お買い得」な資産となりました。
【日本は魅力的か】
永住や生活を前提とした不動産購入も増加しました。特に東京都内における中国人の人口推移を見ると、永住者は一貫して増加しており、存在感を高めてきました。近年では、学歴競争の激化や中国政府による学習塾への規制、教育費の高騰など、厳しい教育環境を避けるために、子どもを日本で教育させたいと考える親も増加しました。この「爆買い」現象については、さまざまな見方や意見があります。しかし、人口減少に悩む日本にとっては、優秀な人材を獲得する好機と捉え、積極的に対応することも一つの選択肢となりました。
※デイリー新潮 中国人向け不動産サイトを調べて分かった「意外な事実」等を参照・整理