中国社会を覆う少子高齢化と未婚化の波は、想像以上のスピードで進行しています。2026年上半期の婚姻件数は約328万組、離婚件数は約138万組となりました。婚姻件数に対する離婚件数の割合を示す「離結比」は42.23%にのぼります。かつて婚姻件数がピークを迎えた2013年には年間約1,347万組ものカップルが誕生していましたが、現在はその半分程度のペースにまで落ち込んでいるのが現状です。

 こうした「結婚の減少」と「結婚の晩婚化」はダイレクトに出生数の激減へと直結しています。2025年の中国全土における出生人口は792万人と、前年の954万人からわずか1年で162万人(約17%)も減少しました。ピークであった2016年の1,785万人と比較すれば、すでに半数以下という衝撃的な数字となっています。その背景には、結婚適齢層(20~40歳)の人口自体がこの10年で約6,400万人も減少したという構造的な問題がありますが、それ以上に大きいのが、若者のライフスタイルの変化と晩婚化の加速です。2025年の初婚平均年齢は男性が約30.4歳、女性が約28.6歳とされています。1980年代の男性24.5歳・女性22.7歳、あるいは2010年の男性25.75歳・女性24歳という水準と比べても、ここ15年の晩婚化のスピードがいかに凄まじいかがうかがえます。また、大学院進学者の増加に代表される高学歴化(大学院生はこの10年で1.5倍以上に増加)により、社会に出る年齢自体が伸びていることも理由の一つです。しかし、それ以上に、若者を躊躇させているのは「経済的な現実」と言えます。上昇し続ける住宅価格や子育て費用に対し、若年層の所得の伸びは追いついていません。

 こうした事態に対して、行政部門は手をこまねいているわけではなく、2025年5月に施行された改正「婚姻登記条例」では、これまで戸籍地でしか手続きできなかった地域制限が撤廃され、戸籍簿の提出も不要となりました。これにより、全国各地の公園や観光地、商業施設、歴史的建造物、さらにはクルーズ船や高速道路のサービスエリアにまで「婚姻登記所」が設置されるようになりました。この柔軟な制度改革と、自治体による結婚奨励金やクーポンの後押しにより、2025年の婚姻件数は676万5,000組と、前年比10.8%の持ち直しを見せました。とりわけ、従来の地元での大規模な披露宴に代わり、旅先で婚姻手続きと挙式を同時に楽しむ「旅先結婚式」は新たなトレンドとして定着しつつあります。

 「結婚式+観光」という新たな消費スタイルは、経済界におきましても1兆元(約20兆円)規模の巨大市場として大きな期待を集めています。どこか日本の昭和期における「新婚旅行ブーム」を彷彿とさせるような、華やかな消費の光景です。この行政努力が根本的な解決策になっているかと言えば、まだ疑問が残るところです。2025年の婚姻年齢の内訳を見ますと、30代以上や再婚層の比率が確実に増えており、晩婚化の波そのものを押し戻せていません。手続きを簡略化し、イベントとしての結婚を魅力的に演出することは、経済刺激や一時的な後押しにはなります。しかし、若者が最も恐れているのは「結婚式そのものの費用」ではなく、「結婚した後に続く生活コスト」や「育児と仕事の両立という将来の負担」ではないでしょうか。

レコードチャイナ:中国、昨年の婚姻件数は676万5000組 等を参照・整理

※ミニレポートの追加記事、NOTEに掲載。https://note.com/fine_whale2904)