「メタバース」とは、インターネット上に構築された、多人数参加型の3次元仮想現実世界のことです。中国語で“元宇宙“と言い、2021年11月には、中国の通信関連企業を束ねる業界団体CMCA(中国移動通信連合会)傘下に、メタバースに関する初の業界団体として「元宇宙産業委員会」が発足しました。まだ始動したばかりですが、例として、チャイナ・モバイルのデジタルコンテンツ子会社Miguは21年11月、メタバース事業のロードマップを発表し、超高精細映像、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)など、様々なソフトウェア・ハードウェア環境を構築して、人々が交流し自己実現できるような、新しい方法を開拓していくとしています。また最近では、「アリババ・グループ」や「テンセント」などの巨大IT企業が新たに参入し、関連企業の株価が高騰するなど、開発や投資も加速しています。

中国のネット検索最大手「百度 BAIDU」は昨年12月27日、中国初のメタバースプラットフォームと言われる、独自開発した仮想空間「希壌(シーラン)」というサービスを公開しました。メタバースプラットフォームには、スマートフォンなどで専用アプリを使い、個人情報を登録してアバターを作成すると入場できます。仮想空間内部の都市に入ると、会議などのイベントを開ける建物や、少林寺などの様々な景観も再現されており、利用者はアバター(分身)を通じて、物理的に離れた場所にいる別の利用者と交流したり観光したりできるようになっており、最大で10万人が同時に利用可能となっています。

他にも、大手企業や新興企業が入り乱れて、メタバースのビジネス化を目指しています。調査会社によると、2021年の1年間でアリババ・グループやテンセント・ホールディングスなど巨大企業を含む1,000社以上が、メタバースに関連する合計約1万件の商標登録を申請したといわれています。関連技術を持つ企業の買収も活発で、関連株も高騰しています。こうした熱狂は、昨年夏ごろに始まり、「元宇宙(メタバース)」は2021年のベスト流行語にランクインしました。

一方で、中国当局は、メタバースの開発を厳しく監督していく意向を示唆しており、仮想空間の中の不動産が、投機的に取り引きされているとして「メタバース」にはリスクが存在すると指摘するなど、過熱ぶりをけん制する動きも出ています。最近殺到しているメタバース関連への商標出願も、知的財産当局が厳しく審査を行っており、NetEase、愛奇芸、小紅書などから出された、多くのメタバース関連商標申請も却下されました。アリババ・グループ、テンセントなどの申請は、現在まだ申請中であると伝えられています。

 現在、「メタバース」という概念は、過剰に高く評価されている恐れもあることから、中国政府は経済効果とのバランスをとろうとしている、という意見もあります。昨年10月、国家安全部の傘下にある北京のシンクタンクCICIRが、「メタバースと国家安全保障」というレポートを公表しました。レポートでは、メタバース製品は現時点でまだ革命的な製品やアプリケーションは生まれていないと説明しています。実際、「希壌(シーラン)」を発表した百度も、「本格的な販売までに、あと6年かかる」と述べており、すぐにその力を発揮できる状況ではありません。しかし、技術コストが下がり、ユーザーが増えれば、5〜10年後には、爆発的に普及する可能性があると予想されています。レポートでは、「政府が開発と安全性のバランスを取り、技術的なルールや道徳的・倫理的な基準を事前に準備する必要がある」と結論づけています。            

 (Reuters等を参考に整理)