漢方生活:蓬(ヨモギ)・棗(ナツメ)

中国では、冷たい飲み物を避ける習慣があります。夏の暑い日でも、学生に「何か冷たいもの、飲みませんか。」と誘うと、「先生、冷たいものは体によくありません。体にいいスイーツを食べましょう。」と言われ、出てきたスイーツには、ナツメ、クコの実、竜眼などが入っていました。今回は、このスイーツに代表される体と心によい中国の漢方生活を紹介します。


漢方ー2.jpg中国の日常生活でよく使われている漢方薬材を10種類あげると、蓬(ヨモギ)、棗(ナツメ)、竜眼(リュウガン)、蓮(ハス)の実、枸杞(クコ)の実、黄耆(コウギ)、当帰(トウキ)、菊花、陳皮、山査子(サンザシ)があります。 日本で草餅に使われているヨモギは、中国ではお菓子だけでなく、様々な用途に使われています。清明節(先祖を祭る伝統的な祭日)を迎えるとき、中国南方の農家では、もち米とヨモギを蒸してヨモギ餅を作って家族で食べます。また、寒い日が続く冬の夜、足湯で体を温めるときの浴剤に、ヨモギを使います。ヨモギには、体を温め、血行をよくするだけでなく、リラックスして安眠できるという効果もあるようです。旧暦5月5日の端午の節句のときには、ヨモギの葉を家のドアに掛けます。この時期は蒸し暑く、細菌や虫が発生しやすいため、ヨモギの特別な香りを利用して、殺菌し虫を駆除します。さらに、ヨモギにより、不吉なものから自分の身を守る、とも考えられているようです。 


漢方ー4.jpg次にナツメを紹介しましょう。ナツメは、リンゴやナシに似た食感の果物です。ほんのりとした甘みと酸味があり、夏から秋にかけて、スーパーで山積みになっています。どちらかというと中国人は、生より乾燥したナツメを好みます。乾燥ナツメをそのまま食べるのはもちろん、ナツメ茶、ナツメ粥、ナツメご飯のほか、スープやスイーツなど、食べ方はたくさんあります。中国では古くから「1日に3粒のナツメを食べると100歳になっても年を取らない」と言われており、アンチエイジングや滋養強壮に効果があると考えられているのです。また、ナツメは中国の結婚式には欠かせない、縁起のよい食べ物です。それは「早生貴子」(子宝に恵まれるように)という四字熟語の、「早」と「」(ナツメ)の中国語の音が同じということから、ナツメを食べて縁起を担いでいるわけです。
漢方というと、煎じて飲む苦い薬や、葛根湯などよく知られている漢方薬をイメージするかもしれません。ところが中国では、ここに紹介したように、薬というよりもっと身近で、人々の生活の一部になっているのです。

寧波大学外国語学院外籍教師

静岡県立大学グローバル地域センター客員講師

(静岡県日中友好協議会 交流推進員)

横 井 香 織

横井香織さん