寧波の院士林、銀杏

寧波の市街地には、緑豊かな三日月の形をした月湖と、その周囲に歴史的文化的な名所旧跡が点在する月湖公園があります。月湖は唐の時代に整備された人造湖で、宋元年間に月湖十洲や月島、芙蓉洲などの中州が造られ、月湖沿いに関帝廟、清真寺をはじめ茶文化博物館や移築された蒋宅、林宅などがあります。四季折々の月湖の美しい姿は、一年が365日あるなら、365の風景があると言われています。休日になると、観光客はもちろん、子ども連れや老夫婦などが訪れ、寧波市民の憩いの場になっています。この月湖公園が、今回の舞台です。

 

 寧波は、多くのビジネスの成功者の出身地として、世界に名を知られています。それだけでなく、実は多くの科学者を輩出してきた地でもあります。その代表は、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した屠(とゆうゆう)氏です。彼女は、寧波に生まれ中国本土で教育を受け、かつ研究を続けた生粋の中国人として、初めてノーベル賞を受賞しました。マラリア治療薬研究の世界的権威です。

 

月湖公園には、寧波出身の科学者を称えるスポットがあります。「院士林」です。院士というのは、中国の科学技術分野の最高研究機関である中国科学院と中国工程院が付与する終身の称号です。1999年9月、寧波市政府は、寧波出身の院士86名を寧波に招待しました。会合の後、月湖公園の一角で、院士が一人一本の銀杏の木を植樹しました。こうして、86本の銀杏が植樹された寧波院士林が誕生しました。銀杏の林の前には、86名の院士の名前を刻んだ石碑が設置されています。その後、寧波籍の院士の人数は110名を超え、院士輩出都市のトップクラスに挙げられています。

 

 毎年秋になると、銀杏の葉は黄色く色づきます。黄色は黄金色に限りなく近く、院士の功績を称えるという意味があります。中国の人々にとって、「色」は重要なのです。寧波市民は、この86本の銀杏の林で、家族や友人と深まる秋を感じ、楽しんでいます。地元の名士を樹木に結びつけて称賛するという発想は、日本にはないかもしれません。しかし、故郷を思う気持ちや四季折々の風景を楽しむ感性は、共通のものがあります。次の機会には、2005年に造られた寧波院士公園に出かけてみたいと思っています。

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寄稿:寧波大学外国語学院外籍教師、静岡県立大学グローバル地域ンター客員講師

   (静岡県日中友好協議会 交流推進員)横井 香織

横井香織さん